殿中(読み)でんちゅう

精選版 日本国語大辞典 「殿中」の意味・読み・例文・類語

でん‐ちゅう【殿中】

〘名〙
① (古く「てんちゅう」とも) 御殿の中。また、将軍居所。営中。殿内。
※続日本紀‐延暦九年(790)七月辛巳「宜今始近侍殿中」 〔漢書‐文帝紀〕
② 「でんちゅうばおり(殿中羽織)」の略。旗本奴がよく着用したことから、奴風俗をいったり、それに由来したはやしことば「殿中じゃ張肱(はりひじ)じゃ」などの形でも多く用いられた。
※浮世草子・色里三所世帯(1688)上「関脇に素㒵の小雪〈略〉殿(テン)中の宇治、琴好のお松、我おとらじとちから足ふめば」
江戸時代に流行した菅笠。男女共用いた。一文字笠
※雑俳・川傍柳(1780‐83)三「殿中をかぶりあわれなぼてゐふり」
④ 懐中用の短いキセル筒。〔随筆守貞漫稿(1837‐53)〕

でん‐ち【殿中】

〘名〙 (「でんちゅう」の変化した語) 「でんちばおり(殿中羽織)」の略。〔俳諧・季寄新題集(1848)〕

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デジタル大辞泉 「殿中」の意味・読み・例文・類語

でん‐ちゅう【殿中】

《古くは「てんちゅう」とも》御殿の中。また、将軍の居所。
江戸時代に流行した木綿の袖なし羽織。胴服どうぶく殿中羽織
江戸末期に流行した男子用の編み笠。一文字笠。

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普及版 字通 「殿中」の読み・字形・画数・意味

【殿中】でんちゆう

宮中。〔後漢書、丁鴻伝〕肅宗~五經の同異を北宮白虎に論定せしむ。~鴻、才の高きを以て、論最もらかなり。~時人じて曰ふ、殿中無雙、丁孝と。

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