毛嚢炎(毛包炎)(読み)もうのうえん(もうほうえん)(英語表記)Folliculitis

六訂版 家庭医学大全科 「毛嚢炎(毛包炎)」の解説

毛嚢炎(毛包炎)
もうのうえん(もうほうえん)
Folliculitis
(皮膚の病気)

どんな病気か

 ひとつの毛包毛穴の奥で毛根を包んでいるところ)にブドウ球菌感染して起こる皮膚の病気です。

原因は何か

 黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(主に表皮ブドウ球菌)、あるいは両方が同時に感染する場合があります。毛包部にごく軽い傷がついた時、皮膚の湿った状態が長く続いた場合、あるいは、副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイド薬を塗っている場合などが誘因となります。

症状の現れ方

 毛包の上部だけの浅い部分の感染症で、個々の発疹は毛包に一致した赤い丘疹(きゅうしん)(ぶつぶつ)ないしは中央にうみをもった丘疹膿疱(のうほう))で、まわりに赤みがあります(図39)。かゆみはなく、痛みもほとんどありません(表在性毛包炎)。

 丘疹や膿疱の部分がやや硬く触れる根をもったものは、おでき(癤(せつ))の軽い、ないしは小さいもので、軽い痛みがあり、表皮ブドウ球菌より黄色ブドウ球菌による場合が多いようです(深在性毛包炎)。首の後ろ・太もも・お尻などにできることが多く、1個あるいは数個~数十個になることもあります。

検査と診断

 膿疱のうみを培養すると、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、あるいは両方の菌が検出されます。にきび(痤瘡(ざそう))の一つ一つのぶつぶつは毛包炎ですが、ニキビは、毛包炎・面皰(めんぽう)(黄白色に見える毛穴が詰まった状態で炎症がないもの)・にきび痕が混在している状態をいい、思春期の人たちの顔・胸・背中の上部に多くみられます。かみそり負け(尋常性毛瘡(じんじょうせいもうそう))の一つ一つのぶつぶつも毛包炎です。

 あせもにブドウ球菌が感染して起こるエクリン汗孔炎(かんこうえん)汗孔周囲炎は、毛包炎に似ていて区別は難しいのですが、乳幼児の首周囲や肘の内側など汗のたまりやすい場所にみられ、夏に多いことが診断に参考となります。

治療の方法

 数が少ない場合はとくに治療の必要はなく、自然に治ります。次から次にたくさんできる場合や、痛みがありおでき)に近いものは抗菌薬(化膿止めののみ薬)を3~4日間内服します。

病気に気づいたらどうする

 たまにできる程度であれば気にすることはありません。次々とたくさんできる場合は、毛包炎ができるきっかけ(首筋や太ももではいつも衣類で肌が刺激を受けていないかどうか、副腎皮質ステロイド薬を必要以上に塗っていないかどうか、など)がないかを考えてみましょう。

 思いあたる誘因もなく、長く続くようであれば皮膚科専門医に相談しましょう。

多田 讓治


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「毛嚢炎(毛包炎)」の意味・わかりやすい解説

毛嚢炎
もうのうえん

毛包炎ともいい、毛孔中心に小さく膿(うみ)をもち、周囲は多少赤く、軽い痛みがある。にきびと合併してみられることも多い。毛孔にブドウ球菌が感染しておこるが、病変は表皮内にあって癤(せつ)より浅く、症状も軽い。成人男子の口ひげあごひげなどの硬毛に生ずるものは毛瘡(もうそう)とよばれ、俗に「かみそりまけ」という。

[野波英一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「毛嚢炎(毛包炎)」の意味・わかりやすい解説

毛嚢炎【もうのうえん】

毛嚢(毛包)の炎症。おもにブドウ球菌の感染により起こる。毛嚢に一致した紅色丘疹を生じ,化膿する。大きくなったものを【せつ】という。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

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