毛染(読み)ケゾメ

デジタル大辞泉 「毛染」の意味・読み・例文・類語

け‐ぞめ【毛染(め)】

毛を染めること。また、その薬。

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精選版 日本国語大辞典 「毛染」の意味・読み・例文・類語

け‐ぞめ【毛染】

〘名〙
毛髪を染めること。また、その薬品。毛染め薬。
※ボッチチェリの扉(1961)〈森茉莉〉「妙にどす黒い、余り見たことのない顔色をしてゐた。毛染めの薬にかぶれた跡だといふことが後で判ったのだが」
原毛を洗浄後、紡績工程前にばら毛のままで染色すること。霜降り糸あるいはホームスパン用の糸などを作る時に行なう。

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改訂新版 世界大百科事典 「毛染」の意味・わかりやすい解説

毛染 (けぞめ)

頭髪を染めることを目的として,古来さまざまな化粧品,染毛剤が用いられてきた。古代エジプトでは黒い牡牛などの血を使った白髪染や,かつら)を染めることも行われていた。古代ギリシア・ローマではブロンドの髪が好まれ,羊の脂とブナの木の灰を混ぜた〈サポ〉をすり込み,洗い落としたあと,太陽にさらして金髪になるのを待ったという。黒や褐色に染めるためには,古くからヘンナの葉,カミツレの花,クルミの殻,ビンロウジュの実などが用いられていた。なかでもヘンナは単独では刺激は少ないが,赤みがかった褐色に染まるので,他の植物や金属塩と併用していろいろな色調を出すのに広く使われていた。中国では古くからクルミの皮(胡桃皮,胡桃根皮)やザクロの皮(酸榴皮)を白髪染に使っていた。日本では《平家物語》に斎藤別当実盛が出陣に際し白髪を染めたという話があるが,〈あらはせて見給へは,白髪にこそ成にけり〉とあるので,簡単に落ちたものであろう。江戸時代末期には白髪染も商品化され,川柳に詠まれている〈今ならば実盛も買ふ美玄香〉は特に有名だった。《都風俗化粧伝(みやこふうぞくけわいでん)》には〈白髪を黒うして光沢を出す薬の伝〉として,ザクロの皮を煎じてたびたび塗る法や,桑の根を油で煮つめたものを髪にひたす法を教えている。明治の中ごろから没食子酸水溶液と硝酸銀のアンモニウム液で染める方法などの鉱物性染毛剤や,パラフェニレンジアミンのような合成染毛剤が白髪染として使われだした。第2次大戦後は黒髪を明るい栗色系の色調に染める〈おしゃれ染め〉が行われるようになった。

 染毛剤を大別すると,一時的染毛剤のカラーリンス,カラークリーム,カラーチョークカラースプレーなどと,長期的染毛剤である古典的な白髪染と酸化染料を用いたヘアダイとがある。酸化染料を使ったものは一般に2剤からなり,毛髪内で酸化・重合して不溶性色素となる。この種のものは医薬部外品であるから,使用前にパッチテスト(貼付試験)をして肌の抵抗性を確かめる必要があるが,前者は法定色素を使った化粧品で,その必要性は少ない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「毛染」の意味・わかりやすい解説

毛染
けぞめ

毛髪を染めること,またはその薬剤。日本では普通白髪染 (しらがぞめ) をさす言葉であった。古くは斎藤実盛が髪を黒くして出陣したという故事もあり,明治以降も,酸化毛染剤パラフェニレンジアミンによる白髪染は女性のたしなみとして流行した。ヨーロッパやエジプトでは,自然の毛色の多様性から,色染の風習があり,第2次世界大戦後は,日本もヘアダイとして多色の毛染が行われている。ただ日本人の毛髪の色素が濃いため,過酸化水素水による脱色が必要で,これをヘアブリーチといっているが,逆に脱色を加減して毛染と同じ効果をあげる美容法もある。また一時的な毛染としてカラークレヨン,カラースプレーの使用も行われている。

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