民権論(読み)ミンケンロン

デジタル大辞泉 「民権論」の意味・読み・例文・類語

みんけん‐ろん【民権論】

個人国民の自由・権利確立こそが国権を確保するための前提であるとする思想。明治前期に唱えられたが、やがて国権論に圧倒された。

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精選版 日本国語大辞典 「民権論」の意味・読み・例文・類語

みんけん‐ろん【民権論】

〘名〙 人民の権利、特にその政治的権利を主張する理論。自由民権運動時代に盛んに唱えられ、その指導原理となった。自由民権論。
経世の学亦講究す可し(1882)〈福沢諭吉〉「然かも其書其演説は頗る詭激奇抜の民権論にして人を驚かすに足るものとせん」

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「民権論」の意味・わかりやすい解説

民権論
みんけんろん

おもに明治前半を通し提唱された民衆の権利擁護思想であるが,特に自由主義思想と結びつくことにより自由民権論として明確な政治思想となった。その具体的内容は,天賦人権論抵抗権革命権の主張,国会開設論などを含むが,市民的自由と私的自由との区別や関連については必ずしも意識されなかった。また民権論は必ずしも国権論と対立する思想ではなかった。植木枝盛が「民権を張らざれば国権を張り独立を保つ能はず」と論じているとおり,民権と国権とが背反しないところに,明治期の人権思想の特徴があった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「民権論」の解説

民権論
みんけんろん

自由民権運動の支柱となった思想で,天賦人権論にもとづき,国民の政治的・市民的権利の確立を説く政治理論。福沢諭吉ら啓蒙思想家によって紹介され,1879年(明治12)植木枝盛(えもり)の「民権自由論」や,新聞・雑誌,地域における学習・討論会などを通じて広く国民の間に浸透した。国会開設運動や革命権・抵抗権を盛りこんだ私擬憲法日本国国憲案」の作成などは,民権論を具体的に実現するために行われた自由民権運動の一つである。83年には馬場辰猪(たつい)の「天賦人権論」,植木の「天賦人権弁」など代表的な民権論の著書も出版された。しかし,民権運動の挫折,国権論の台頭国家による天皇制思想の注入などにより,近代日本において民権論は十分には発展をみなかった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「民権論」の解説

民権論
みんけんろん

明治前期,自由民権運動の指導理論
国権拡張を主張する国権論に対し,人民の権利伸張を第一に主張する考え。自由民権運動期,中江兆民・植木枝盛らが主唱。国権論と妥協・結合するところもあり,1890年代以後衰退した。

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世界大百科事典(旧版)内の民権論の言及

【国権論】より

…また,内治派に対して国権派などとも使用された。民権論が,人民の権利や自由が保障されて初めて国家の権力が強化・伸張される,としたのに対して,国権論は,国家の権力が強化されてこそ人民の権利や自由が保たれる,と主張するものである。しかし,国権論と民権論は必ずしも図式的に明分した形で展開されたわけではなかった。…

※「民権論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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