気管切開(読み)きかんせっかい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「気管切開」の意味・わかりやすい解説

気管切開
きかんせっかい

本来の気道口である口もしくは鼻孔とは別に、新たに前頸部(けいぶ)に気道口を設ける手術のことをいう。前頸部正中線上で、通常第2~第4気管輪を切開し、気管カニューレ(気管切開チューブまたは気管套管(とうかん)ともいう)を挿入する。気管カニューレを抜去すると、気管切開口は自然閉鎖するが、永続的に開存させておく必要がある場合は、特別な処置がとられる。一般に気管切開が必要となるのは、(1)咽頭(いんとう)あるいは喉頭(こうとう)(上気道ともいう)に狭窄(きょうさく)ないし閉塞(へいそく)があり、気道を確保する必要があるとき、(2)長期人工呼吸を要するとき、(3)呼吸筋の麻痺(まひ)・筋力低下などにより気道内分泌物の喀出(かくしゅつ)ができず、長期にわたり吸引等の処置を必要とするとき、などの場合である。通常、緊急時には行わない。しかし、上気道閉塞(へいそく)症状が重篤かつ切迫し、さらに気管内挿管が困難なときは緊急気管切開法として、輪状甲状軟骨間を切開したり、太い針で穿刺(せんし)する方法がとられる。

[西本五蔵]

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百科事典マイペディア 「気管切開」の意味・わかりやすい解説

気管切開【きかんせっかい】

咽頭,喉頭,上部気管の疾患異物による気道閉塞に対して,救急的処置として頸部(けいぶ)で気管を切開し呼吸を確保する手術。甲状腺の上か下で気管を露出し,これに縦切開を加えて,気管カニューレ(金属製,プラスチック製の曲管)を気管内に挿入する。現在では,経口あるいは経鼻による気管内挿管(そうかん)が日常の手技として普及し,以下のような場合に待期手術として行われることが多い。1.上気道閉塞,2.気道内分泌物の長期管理,3.長期の気道確保・呼吸管理。
→関連項目気道確保

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