水和(読み)すいわ

精選版 日本国語大辞典 「水和」の意味・読み・例文・類語

すい‐わ【水和】

〘名〙
水中に分散している粒子水溶液中の溶質やイオンまたはコロイド分子が、溶媒である水の分子と結合している場合か、強い相互作用下にある現象。
ゼラチン澱粉などがゲル状になって、ゲル内部の水がほとんど結合状態にあること。さらに広く結晶水の水、固体表面のぬれまで含めていうことがある。
不飽和結合に水が付加する反応。たとえば、エチレンに水が付加してエチルアルコールになる反応など。

すい‐か ‥クヮ【水和】

〘名〙 (「か」は「和」の漢音)

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デジタル大辞泉 「水和」の意味・読み・例文・類語

すい‐わ【水和】

水溶液中の分子またはイオンあるいは分散したコロイド粒子などが、溶媒の水分子と相互作用して集団をつくる現象。水分子との相互作用が強いために化合物を生成するときは、かつて水和すいか、あるいは水化・水加などといった。

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化学辞典 第2版 「水和」の解説

水和
スイワ
hydration

一般に,ある化学種(イオン,無機化合物有機化合物など)が水と結合することをいう.【】水中に溶解した荷電粒子(イオン,電子)が,そのまわりに1個以上の水分子を強く引きつけ,全体として一つの集団的性質を示すこと.イオンの場合は水和イオン,電子の場合は水和電子という.水和のとき水和エネルギーを放出する.粒子と水分子の間の相互作用は,電荷と水分子の双極子の間の静電引力による.電場の作用により,水和イオンまたは水和電子が移動するときには,荷電粒子は水和した水分子を引きつれて動くから,その移動度は水和の程度に依存する.たとえば,水溶液中のイオンの導電率は Li < Na < K の順で,これはイオン自身の大きさから期待される順序とは逆である.これは Li のように小さいイオンほど電荷と双極子の間の有効距離が小さく,したがって水和の程度が大きいためである.水蒸気の存在下で低圧の気体Xを電子衝撃するとき,イオン-分子反応により,X (H2O)n(n整数)のような高次イオンができることが質量分析計で見いだされているが,これも水和イオンといわれる.【】イオンの空の軌道に水分子の非共有電子対が与えられれば,本質的には共有結合になり,たとえば [Co(H2O)6]2+ などができる.これも水和という.アクア化もこの一つである.【無水物結晶水を取り込むこと.[別用語参照]水和物アルケンの水和:アルケンと水の反応によりアルコールを生成すること.触媒には,リン酸,ケイリン酸,ケイタングステン酸などの均一系と,WO3,SiO2・Al2O3ゼオライトなどの不均一系固体酸が知られている.

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改訂新版 世界大百科事典 「水和」の意味・わかりやすい解説

水和 (すいわ)
hydration

溶媒和solvationの一種で,溶媒が水である場合をいう。ある物質が水に溶けて溶液の状態にあるとき,溶質分子またはそのイオン(溶質粒子と総称)はその周囲に水分子を引きつけるか,またはその周囲の水を普通の水とは異なる状態にして安定化している。このように溶質と水との相互作用が水和である。水和の程度は,水和数(1分子または1molの溶質に水和している水の分子数またはモル数),水和エネルギーなどで示される。水溶液が示すさまざまな性質は,この水和により定性的にはある程度まで解釈が可能である。たとえば不揮発性物質の水溶液にみられる束一的性質(蒸気圧降下,沸点上昇,凝固点降下など)について,水和している水は溶質粒子に引きつけられているために,蒸発しにくくなっているとすれば,蒸気圧降下と沸点上昇は説明できるし,また水和している水は普通の水とは構造が異なり,凍りにくくなっているとすれば,凝固点降下について説明できる。溶質が電解質の場合には,イオンの水和すなわちイオンと水という電気双極子(または四重極子)間の静電的な相互作用がその性質を特徴づける。デンプンやショ糖などのように溶質が非電解質の場合は,溶質粒子がイオンである場合とは異なる水との相互作用があるとみられている。それは生体組織にもみられると同様に,相互作用の原因が主として水素結合であることによる場合が多い。さらに固体の状態でも結晶水を含む場合に,その物質を水和物hydrateという。また固体面へ吸着した水,コロイド物質の膨潤水などについても,広い意味で水和ということがある。水和については,熱力学的,動力学的,構造的などの各方面から研究されている。
コロイド →溶媒和
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水和」の意味・わかりやすい解説

水和
すいわ
hydration

水溶液の中で、溶質の分子またはイオンがその周りにいくつかの水分子を引き付け、一つの分子集団をつくる現象。溶媒和の一種で、分子またはイオンと水分子との間の化学反応、または化学結合によって集まった場合には、とくに水化ということもある。

 一般に水和の場合には結合する水分子の数が一定でないことが多い。陽イオンの水和は、イオンの電荷が大きく、イオン半径の小さいほど著しい。多くの金属塩類水溶液の中では、金属イオンが溶けているように表すことが多いが、実際には裸のイオンが存在するわけではなく、水分子の水和したイオンとして存在する。たとえばFe2+は、水溶液中では[Fe(H2O)6]2+のようなアクアイオン、Na+はNa(H2O)n+のような水和イオンとなり、これらがその周りの水分子との相互作用(水素結合でつながる)によって溶液中に分散した状態になっている。ほかの分子の場合でも同様で、水に溶解しているときは、かならず水分子の水和によって分散している。

[中原勝儼]

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百科事典マイペディア 「水和」の意味・わかりやすい解説

水和【すいわ】

水溶液中で溶質分子またはイオンがそのまわりにいくつかの水分子をひきつけて一つの集団をつくる現象。イオンの場合には,イオンと水分子双極子との間の静電引力によるものと考えられる。水和したものがそのまま結晶にもみられることがある。たとえば硫酸ニッケル含水塩NiSO4・7H2Oでは[Ni(H2O)6]SO4・H2Oのように陽イオン,陰イオンともに水和している。
→関連項目溶媒和

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栄養・生化学辞典 「水和」の解説

水和

 溶質または分散粒子が水分子と結合して存在すること.水からみると,自由水でない状態になる.

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