水子(読み)ミズコ

デジタル大辞泉 「水子」の意味・読み・例文・類語

みず‐こ〔みづ‐〕【水子/稚子】

《「みずご」とも》
生まれてあまり日のたたない子。あかご。
「―の顔を見入っていた」〈秋声足迹
胎児。特に、流産または堕胎した胎児。「―供養

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改訂新版 世界大百科事典 「水子」の意味・わかりやすい解説

水子 (みずこ)

仏教の戒名の一つで水子(すいじ)といい,月が満たないで死産した,未熟児や死産児をさす。水子を〈みずこ〉と読む例は古記録の中にはみあたらず,民間語彙の中に少しあるだけである。近年,妊娠中絶した胎児に対して,供養するという考えがでてきて〈みずこ〉が一般化したものである。現代では,水子地蔵水子観音を新設する寺が増え,水子のたたりがうんぬんされるようになった。民間の風習では,7歳以下の子どもは,人間の子と考えず,まだ神の子であるという考え方があり,死んでも仏にはならないため,葬式埋葬も一般の人とは別にした。たとえば土間入口に埋葬するとか,墓地に埋める場合でも入口や隅に特別の場所を設け,丸い石だけを置くとか,板卒塔婆だけで墓石をたてないなどの例が多い。葬式も行わなかったり,やってもわざと生臭い魚を入れて仏の手に渡さないという習俗がある。出生したばかりの子どもを殺す間引き方言に,モドシ,コガエシ,オシカエシ,ブッカエシの語があるように,神にかえすという観念があった。また胎児の埋葬も遠くで行うと,再び生まれてこないと考えて,家の近くに埋めたのである。

 このように子どもは人並みの供養をされないため,無縁仏として村境や墓地の入口にまとめて葬られ,境の神である地蔵の元に集まるという考えが生まれた。間引きされた子をジゾウッコという地方があるのはこのためで,賽の河原に子どもの魂がとどまり,地蔵の世話になるとされている。7歳以下で死亡した子どもに対して,孩児がいじ),嬰児(えいじ),幼児(ようじ)の戒名を使うが,水子(すいじ)の例は少ない。幼児や胎児が,死して神のもとに戻らずこの世にとどまってたたるとされ,水子地蔵などがまつられるのは,日本人の子どもに対する考えが変わってきている結果であるといえよう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水子」の意味・わかりやすい解説

水子
みずこ

生まれてあまり日のたたない赤子。嬰児(えいじ)とかウブコという。一般に水子という場合には、生後まもなくして死んだ子をいう場合が多い。神奈川県では、水子が死んだときは一人前の葬式をすると、あの世でいじめられるといって、家族だけで埋葬し、生後すぐに死んだときは人形を添えて埋めてやる。同県相模原(さがみはら)市緑(みどり)区佐野川(さのがわ)の上岩(かみいわ)地区では、赤ん坊は無縁仏だといって、埋めた上に竹を刺し目ざるをかけた。水子の場合は手に墨をつけてやると生まれかわってくる。もし字をつけた子が生まれたときは、その墓の土でこすらねば落ちない。だから手に字を書くものではないという。長崎県壱岐(いき)の島では、生後その年のうちに死んだものを水子という。水子は本葬式をせず、したがって仏の数に入れない。入れるとかえってよくない。こうしておけば、やがて生まれかわってくるものだと考えられている。

 また水子の魂は、地蔵の世話になるといわれ、寺院に水子地蔵が祀(まつ)られ、水子供養が行われる。

[大藤ゆき]

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