水腫(読み)すいしゅ(英語表記)edema

翻訳|edema

精選版 日本国語大辞典 「水腫」の意味・読み・例文・類語

すい‐しゅ【水腫】

〘名〙 身体の組織のすきまや体腔中に組織液リンパ液が多量にたまっている状態。組織中にたまった場合を浮腫(ふしゅ)、体腔中にたまった場合は、場所により胸水・腹水・心嚢水腫という。すいしょう。水気(すいき)
※妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)二「水腫(スイシュ)(〈注〉ミツフクレ)・乾痟・疥・癩・癰疽、かくのごときらのやまひ」

みず‐ばれ みづ‥【水腫】

〘名〙 水気を内部に含んではれること。また、そのはれもの。水ぶくれ。〔改正増補和英語林集成(1886)〕
夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第一部「水腫(ミヅバ)れのした足を盥の中の湯に浸した」

すい‐しょう【水腫】

〘名〙 (「しょう」は「腫」の漢音) =すいしゅ(水腫)〔後漢書注‐律歴志・三〕

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デジタル大辞泉 「水腫」の意味・読み・例文・類語

すい‐しゅ【水腫】

身体の組織液が異常に多量にたまった状態。皮下組織に起こった場合を浮腫ふしゅ、体腔内の場合を胸水腹水などという。

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改訂新版 世界大百科事典 「水腫」の意味・わかりやすい解説

水腫 (すいしゅ)
edema

細胞間組織内または体腔内に異常に大量の組織液が貯留された状態をいう。浮腫や〈むくみ〉という言葉は皮下組織の水腫にのみ限って使用する場合もあるが,水腫とほぼ同様の意味で使われる場合もある。水腫は,血液中の水分が大量に組織内へ移動したとき,血管およびリンパ管内への組織液の灌流が妨げられたとき,組織の水分の吸着力が増加したときにみられる。これらを左右する要因としては,毛細血管の透過性の増大,毛細血管圧の上昇,血漿の膠質(こうしつ)浸透圧の低下,組織の膨化圧の増加,組織内の塩化ナトリウムないしナトリウムイオン量の増加,リンパ液の灌流障害などがある。

(1)毛細血管の透過性の増大 毛細血管の透過性を高めるものとしては,組織が酸性に傾くこと,ビタミンCおよびDの欠乏のほか,ヒスタミン,ヒアルロニダーゼ,アルカロイド,臓器エキス,昆虫毒,細菌代謝産物の作用などがあり,透過性を減弱させるものとしては副腎皮質ホルモンコルチゾンなどがある。毛細血管の透過性が高まっておこった水腫の場合の組織液は比重が高くタンパク質に富む。炎症性水腫はこのような機序による。

(2)毛細血管圧の上昇 毛細血管圧の上昇によっても水腫がおこる。動脈側の毛細血管圧の上昇の場合には増加した組織液は容易に再吸収され実際に水腫がおこることはないが,静脈側の毛細血管圧が上昇した場合には血管内への組織液の再吸収が減少し,同時にリンパ液の静脈内への灌流も妨げられて水腫をおこす。鬱血(うつけつ)のときの鬱血性水腫はこのような機序でおこり,局所的にも全身的にもみられる。このときの組織液は比重が低くタンパク質は少ない。

(3)血漿の膠質浸透圧の低下 血漿の膠質浸透圧は血漿タンパク質,とくにアルブミンの量に左右され,アルブミンの量が減少すると浸透圧は低くなり水腫がおこる。アルブミンの減少をきたす原因としては摂取の不足と排出過剰とがある。前者は飢餓や栄養吸収障害によるもので,戦時中にみられる戦争水腫,全身衰弱状態にみられる悪液質水腫がある。後者は腎臓疾患などで尿中にタンパク質,とくにアルブミンが異常に大量に排出されておこる。心不全による全身性の鬱血性水腫はおもに下肢にみられるが,血漿の膠質浸透圧の低下によりおこる水腫は組織圧の低い眼瞼に最初に現れる。

(4)組織の膨化圧の増加,その他 組織の膨化圧の亢進による水腫は組織のタンパク質分子が水分子を吸着する結合力が異常に亢進しておこるもので,甲状腺ホルモンの欠乏による粘液水腫はこの例である。組織液内の塩化ナトリウムないしナトリウムイオン量が増加すると,その浸透圧が上昇し水分を組織間に貯留し水腫がおこる。またリンパ液の灌流が障害されても水腫がおこる。小さいリンパ管には多くの吻合(ふんごう)があり,一部に通過障害があってもほとんど影響はないが,大きなリンパ管,たとえば乳糜(にゆうび)管や胸管が閉塞されると水腫がおこる。また筋肉の運動はリンパ液の灌流を促進するので,半身不随などでは麻痺側に水腫がおこりやすい。フィラリア糸状虫がリンパ管内に多数寄生すると,下肢・外陰部に高度の水腫がおこり,象皮病となる。

 水腫がおこると,組織は膨張し,しわはのび緊張し,蒼白,貧血状となり,温度も下がる。弾性も減弱するので指で押すと圧痕を残す。水腫により体腔内に大量の液が貯留すると,周囲組織を圧迫して機能不全をおこす。たとえば胸腔内に大量の液が貯留すると(胸水),肺は拡張することができず呼吸困難をおこす。水腫が長く続くと,結合組織が増加し硬くなり,水腫性硬変をおこす。
炎症
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百科事典マイペディア 「水腫」の意味・わかりやすい解説

水腫【すいしゅ】

浮腫(ふしゅ),俗にむくみともいう。身体の細胞および細胞間隙(かんげき)に組織液やリンパ液が貯留した状態。皮下組織に起こったものを一般に浮腫(むくみ)といい,むくんだ部位を押すとくぼみが残る。原因となる疾患は,心臓病,腎臓病,肝臓病のほか,粘液水腫,栄養失調など。治療には原因療法のほか利尿薬投与などを行う。
→関連項目まめ網膜炎

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栄養・生化学辞典 「水腫」の解説

水腫

 浮腫,むくみともいう.水分代謝の異常によって間質液,リンパ液が細胞内,細胞間隙,体腔などに過剰に貯留する現象.原因は様々.

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普及版 字通 「水腫」の読み・字形・画数・意味

【水腫】すいしよう

むくみ。

字通「水」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水腫」の意味・わかりやすい解説

水腫
すいしゅ

浮腫

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世界大百科事典(旧版)内の水腫の言及

【血液】より

…細い動脈では血圧が優勢で,水分は組織間隙に出ていき,静脈では逆に血液の浸透圧が優勢となって水分は組織から血管内へ移動する。鬱血(うつけつ)のため静脈系に血液が停滞して静脈圧が高くなったり,腎臓病などで血液中のアルブミンが減少して血液の浸透圧が低下すると,水分は組織にかたより,身体は水膨れの状態,すなわち水腫をきたす。逆に暑さや高熱のため皮膚からの発汗が増したり,激しい下痢などにより水分の排出が増すと,血液や組織液は濃縮されて浸透圧が上昇し,細胞の中の水分が細胞外へ移動して脱水状態となる。…

【循環障害】より

…細胞内液はつねによく調節され増減することなく一定に保たれているが,細胞外液は比較的容易に増減する。細胞外の組織間液が異常に増加した状態が水腫で,一方,発汗,過呼吸,嘔吐,下痢など水分の排出が過剰になると,細胞外液が減少し脱水状態となる。細胞間ないし組織間液の保持には,血圧,血液の量とその浸透圧および脳下垂体後葉の抗利尿ホルモンの作用が大きく関与している。…

【水病】より

…水病は水の代謝異常に起因する病気で,水気病という語も用いられている。水病のうちでもっとも重要なものは水腫であるが,医家によって解釈に違いがあり,さまざまに分類されている。すなわち《金匱(きんき)要略》は風水,皮水,正水などがあるとし,《諸病源候論》は青水,赤水,黄水などの十水(10種の水病)のほかに皮水,毛水なども記載し,二十四水というような分類をした人もあることを伝えている。…

【ネフローゼ】より

タンパク尿は高度で,尿タンパクは3.5g/日以上(健康人では40~80mg/日)となり,多量にタンパク質を喪失する結果,低タンパク血症を続発する。さらに,血漿中のアルブミンが減少することによって,血漿の浸透圧が低下し,体液が組織間隙へ移動して浮腫(水腫)が起こる。ネフローゼ症候群による浮腫は一般に高度で,顔または足から始まって全身に及ぶ。…

【利尿薬】より

…尿を増量して,体内に余分に蓄積された水分を排出させる薬剤。浮腫(水腫)などに際して用いられる。利尿薬はその作用によって,糸球体濾過を促進させるもの,水利尿を起こすもの,尿細管での再吸収を抑制するもの,の三つに大別される。…

※「水腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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