みず‐くき みづ‥【水茎】
〘名〙 (
後世「みずぐき」とも。「万葉集」では「みずくきの」の形で
枕詞として用いられているが、語義未詳。→「
みずくきの」の語誌)
※元真集(966頃か)「みなせ川流れてとまるみづくきの見えぬ
絶間は涙なりけり」
※宇津保(970‐999頃)祭の使「涙だに川となる身にとしをへてかく水茎やいづちゆくらん」
③ 筆。
※観智院本三宝絵(984)上「心の緒は玉づ佐の上に乱れ、涙の雨は水くきの本に流る」
※俳諧・犬子集(1633)序「只水茎に任せつつ、種は尽せぬ言の葉の」
[補注]
語源については、(イ)みずみずしい茎の意で筆のたとえ。(ロ)手紙に玉をつけた梓の木を持たせて使いのしるしとし、その梓をみずみずしい木という意で
消息文のことをいい、転じて筆跡または筆にもいう。(ハ)植物「
コウボウムギ(俗に筆草という)」のことで、その古い地下茎の先端部が筆の穂の形をしているので、切って筆先に用いるところからなど、
諸説ある。
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デジタル大辞泉
「水茎」の意味・読み・例文・類語
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水茎
みずぐき
筆跡や手跡、消息の文や手紙、筆の意。語源には諸説あり、みずみずしい茎の意からとしたり、また昔、手紙をつけるアズサの枝をみずみずしい木とみなし、転じて筆跡、筆の意となったことからとし、また植物のコウボウムギ(別名フデクサ)の古い地下茎が筆の穂の形なので、これを切って筆としたことからなどとする説がある。いずれも平安時代以後の用法であるが、とくに「水茎」を筆、「水茎の跡」で文字・筆跡を意味する例が多い。奈良時代では「水茎の」の形で「岡」「水城(みずき)」にかかる枕詞(まくらことば)として用いられ、岡にかかる場合はミズクキの生えている岡の意により、水城(水辺の防御用土塁、水濠(すいごう))の場合は同音の繰り返しによってかかるとされている。
[藁科勝之]
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