水酸化銅(読み)スイサンカドウ(英語表記)copper hydroxide

デジタル大辞泉 「水酸化銅」の意味・読み・例文・類語

すいさんか‐どう〔スイサンクワ‐〕【水酸化銅】

酸化銅(Ⅰ)。水酸化第一銅。化学式CuOH
水酸化銅(Ⅱ)。銅(Ⅱ)塩の水溶液アルカリを加えて得られる。淡青色粉末。水に溶けず、アンモニア水には錯イオンとなって溶け深青色溶液になる。水酸化第二銅。化学式Cu(OH)2

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精選版 日本国語大辞典 「水酸化銅」の意味・読み・例文・類語

すいさんか‐どう スイサンクヮ‥【水酸化銅】

〘名〙 銅の水酸化物
① 水酸化銅(I)。化学式 CuOH 水酸化第一銅。
② 水酸化銅(II)。化学式 Cu (OH)2 淡青色無定形の粉末または結晶。ベンベルグ人絹の製造、分析試薬などに用いられる。水酸化第二銅。

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改訂新版 世界大百科事典 「水酸化銅」の意味・わかりやすい解説

水酸化銅 (すいさんかどう)
copper hydroxide

酸化数Ⅱの化合物が普通に知られている。化学式Cu(OH)2硫酸銅(Ⅱ)CuSO4水溶液にアンモニアNH3を加えると,まず沈殿を生じ,さらにこれが溶けはじめる。沈殿がちょうど溶解するまでアンモニアを加えた溶液に,アルカリを加えるか,またはこれを硫酸デシケーター中に保存して遊離のアンモニア濃度を減少させると,青白色の結晶性沈殿として得られる。これは反応性がやや小さく100℃に熱しても変化しない。硫酸銅(Ⅱ)水溶液に直接アルカリを加えるとゲル状水酸化物を沈殿するが,これはより反応しやすく,水溶液のまま加熱すると酸化銅(Ⅱ)CuOに変化し黒色を呈する。比重2.368。次に示すような無限鎖状構造をもつ。

各銅原子の上方および下方から隣の鎖のOHが結合し,銅は6個のOHによりとり囲まれている。希酸に不溶。シアン化アルカリ水溶液,アンモニア水には可溶。濃いアルカリ水溶液には[Cu(OH)42⁻をつくって青色溶液となる。銅水溶液の加水分解反応により[Cu2(OH)22⁺が生成する。
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化学辞典 第2版 「水酸化銅」の解説

水酸化銅
スイサンカドウ
copper hydroxide

】水酸化銅(Ⅰ):CuOH(80.55).銅(Ⅰ)塩水溶液に水酸化アルカリを加えると黄色の沈殿として得られる.生じたものは水酸化銅(Ⅰ)とされているが,それよりはCu2O・(H2O)nかCu2Oであろうといわれている.黄色は沈殿の粒の大きさによるとされている.360 ℃ で脱水,酸化銅(Ⅰ)になる.また,沈殿を水中で煮沸すると赤色の酸化銅(Ⅰ)になる.【】水酸化銅(Ⅱ):Cu(OH)2(97.57).可溶性銅(Ⅱ)塩水溶液に小過剰の水酸化アルカリを加えて0 ℃ に保つと,青色のゲル状の水酸化銅(Ⅱ)が得られる.密度2.36 g cm-3.ゲル状のものは反応性が強い.60~80 ℃ に加熱すると黒色の酸化銅(Ⅱ)にかわる.いくぶん両性の性質をもち,濃アルカリには [Cu(OH)4]2- となって溶ける.希薄な酸には溶けない.アンモニア水,シアン化カリウム水溶液には錯塩をつくって溶ける.テトラアンミン錯体[Cu(NH3)4](OH)2溶液は濃青色で,銅の定性分析に利用される.また,シュワイツァー試薬としてセルロースの溶解にも用いられる.そのほか,媒染剤,顔料,銅塩の製造,触媒原料,着色紙などに用いられる.[CAS 20427-59-2]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水酸化銅」の意味・わかりやすい解説

水酸化銅
すいさんかどう
copper hydroxide

銅の水酸化物。銅(Ⅰ)塩水溶液に水酸化アルカリを加えると黄色沈殿としてCu(OH)が得られるといわれているが、これは酸化銅(Ⅰ)Cu2Oのゲルであるとされている。

 一般に水酸化銅というときは水酸化銅(Ⅱ)をさすことが多い。銅(Ⅱ)塩水溶液に水酸化アルカリを反応させると得られる。青色の粉末。冷水に不溶。熱水では脱水されて黒色の酸化銅(Ⅱ)となる。アンモニア水、シアン化アルカリなどには錯イオンをつくって溶ける。アンモニア水に溶けた濃青色の溶液はシュワイツァー試薬(銅アンモニア溶液)とよばれ、キュプラ(銅アンモニアレーヨン)の製造などに用いられる。水酸化アルカリにはコロイド溶液となって溶け、濃いときは錯イオンをつくって溶ける。濃アルコール、酸にも溶ける。

[中原勝儼]

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百科事典マイペディア 「水酸化銅」の意味・わかりやすい解説

水酸化銅【すいさんかどう】

(1)水酸化銅(I)CuOH。比重3.37。塩化銅(I)CuClの冷水溶液にアルカリを加えると生ずる黄色沈殿。組成一定せず,Cu2O・nH2Oのゲルともいわれる。熱すると赤色のCu2Oとなる。(2)水酸化銅(II)Cu(OH)2。比重2.368。銅塩(II)水溶液にアルカリを加えて得られる青色沈殿で,一般に水含量不明の酸化銅水和物CuO・nH2Oのゲル。酸,アルカリに可溶,水に不溶。アンモニア水に溶けて深青色。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水酸化銅」の意味・わかりやすい解説

水酸化銅
すいさんかどう
copper hydroxide

(1) 水酸化銅 (I) ,水酸化第一銅  Cu(OH) 。黄色の沈殿として得られるが組成が一定せず,酸化銅 (I) 水和物のゲルといわれている。 (2) 水酸化銅 (II) ,水酸化第二銅  Cu(OH)2 。青ないし青緑色ゲルか,明るい青色の結晶性粉末。数日間放置するか加熱すると,分解して黒色の酸化銅になる。水に不溶,酸,アンモニアに可溶。レーヨン,他の銅塩の製造,媒染剤,顔料,殺菌剤,殺虫剤などとして使用される。

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