水鶏・秧鶏(読み)くいな

精選版 日本国語大辞典 「水鶏・秧鶏」の意味・読み・例文・類語

くいな くひな【水鶏・秧鶏】

〘名〙
① クイナ科の鳥の総称だが、ヒクイナ(一名ナツクイナ)をさしていう場合が多い。その鳴き声が戸をたたく音に似るところから、鳴くことを「たたく」といい、また、その連想から「く(来)」といいかけて用いるなど、古くから詩歌にとりあげられてきた。《季・夏》 〔本草和名(918頃)〕
拾遺(1005‐07頃か)恋三・八二二「たたくとてやどのつまとをあけたれば人もこずゑのくひななりけり〈よみ人しらず〉」
② クイナ科の鳥。体長約二九センチメートル。体形シギに似る。くちばしは赤く(冬は黒褐色)、あしは黄褐色でともに長い。背面には茶褐色に黒斑があり、腹面は青灰色で体側に白と黒の縞模様がある。水辺の草むらにすみ、小動物や草の実を食べる。日本では北海道で繁殖し、一〇月ころ本州以南に渡る。ふゆくいな。
[補注]「書紀‐皇極元年二月」の記事中の人名の訓注に「水雞、此をば倶毗那(クヒナ)と云ふ」とある。
[語誌](1)鳴き声に特徴があって「古今六帖」などでは戸を叩く音に聞きなされた。しかし、「古今集」や「後撰集」「千載集」「新古今集」に見えず、八代集でわずか五例にすぎないから和歌景物としては定着していないといえよう。
(2)挙例の「拾遺‐恋三」で鳴き声を人の訪れと誤解すると詠んで以来、人の訪問に関わる風物として継承されていく。
(3)中世になると夏の風物詩として定着していき、俳句では夏の季語となっていく。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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