河食作用(読み)かしょくさよう(英語表記)fluvial erosion

改訂新版 世界大百科事典 「河食作用」の意味・わかりやすい解説

河食作用 (かしょくさよう)
fluvial erosion

川の営む浸食作用のこと。河食,正規浸食ともいう。正規浸食とは地球上で最も広い範囲にわたって普遍的に行われる浸食作用という意味があるが,現在ではあまり用いられない。河食には大きく分けて物理的または機械的浸食作用と化学的浸食作用とがある。河食の大部分は物理的に行われ,流水の衝撃あるいは流水の運ぶ土砂衝突摩耗(まもう)などによって河床河岸を削り取る。ふつうは流水だけよりも流水の運ぶ土砂が流水と接する地面を効果的に削り取ったり,表面にやすりをかける。このような作用を磨食corrasion/abrasionまたは削磨と呼ぶ。渦流の発達するところでは甌穴を生ずる。河床がまだ固結してない堆積物から成る場合には,表面の土砂が流水によって運ばれるので洪水のたびに更新される。これに比べると硬い岩盤の所では目に見えるような変化は起こりにくいが,岩石中の節理や割れ目に沿って岩塊がもぎ取られることがあり,これを切離作用という。化学的浸食作用とは流水とこれに接する地面を構成する物質との間に行われる化学反応の結果生じたすべての化学的変化のプロセスを指していい,流水が異物質を溶解して除去するので溶食corrosionという。川の水の中には多量の溶存成分が含まれているが,これはおもに地下水が地中をゆっくりと移動する間に取り込んできたもので,川の水による溶食は地下水に比べて接触時間がはるかに短いので,微々たるものである。

 河食の進行につれて河床は低下し,谷幅は広がる。河床を低下させるような河食を下刻(かこく)または下方浸食deepeningと呼び,多少とも斜めに働きかける河食を側刻または側方浸食lateral erosionと呼ぶが,側刻は水平方向というよりは斜め下方に働く。したがって谷幅の拡大は側刻だけが原因ではなく,斜面を構成する物質が下方へ移動した後に流水が下刻を行いながら運び去った結果である。河食は勾配の急な所ほど強く働き,岩石の軟弱な部分では硬い部分よりも速やかに進行する。しかも河床の縦断面は全川にわたり凹形を呈するように働く。なお,谷を上流方向に長くする浸食作用は谷頭(こくとう)浸食と呼ばれる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「河食作用」の意味・わかりやすい解説

河食作用【かしょくさよう】

河の行う浸食作用。河床が浸食基準面より十分高い場合おもに下刻(河床を洗掘)を行い,浸食基準面に近くなると側刻(谷床を広げる)を行う。また,河谷を上流方向へ延長する作用を谷頭浸食という。
→関連項目河岸段丘浸食作用

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android