油倉(読み)あぶらぐら

精選版 日本国語大辞典 「油倉」の意味・読み・例文・類語

あぶら‐ぐら【油倉】

〘名〙
① 油を貯蔵しておく倉庫
五大力(1913)〈泉鏡花〉九「大問屋の、あの、油蔵(アブラグラ)の中ですわ」
中世東大寺における勧進所異称
大乗院寺社雑事記応仁二年(1468)一一月二日「年預五師方に仰遣之。則申付油倉に云々」

ゆ‐そう ‥サウ【油倉】

〘名〙 油を入れて貯えておく倉庫。あぶらぐら。
※屋代本平家(13C前)一二上人〈略〉是に忍ばせ給へとて、東大寺の油蔵(ユサウ)と云ふ処に置奉り」

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改訂新版 世界大百科事典 「油倉」の意味・わかりやすい解説

油倉 (あぶらくら)

元来仏聖灯油貯備の蔵であるが,歴史上有名な東大寺の油倉は,貯備蔵としてではなく広範な経済活動に従事する寺内機関として注目される。鎌倉前期の東大寺で,欠乏する灯油を旧来の担当者たる御油目代にかわり大仏殿等に供給したのは勧進聖西迎房蓮実であり,その執務所として嘉禎年間(1235-38)に油倉は成立した。国分門内水門郷に坊舎を構える油倉を拠点に,蓮実の跡をつぐ灯油聖は,勧進活動により集積した灯油料田畠を経営し灯油を獲得した。油倉は蓮実が戒壇院再興開山円照上人に傾倒したことから同院被官となり,円照の大勧進職任中に造営機関の勧進所を吸収した。鎌倉後期以降卓越した経済能力を認められ,寺領年貢の収納を端緒に,周防国衙領,寺領荘園,兵庫関等の経営を請け負い,室町前期には寺内金融活動に進出して,東大寺の経済的支柱となった。しかし応仁の乱後の混乱のなかで遠隔地寺領の経営に苦しみ,文明(1469-87)初年に消滅した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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