法楽(読み)ホウラク

デジタル大辞泉 「法楽」の意味・読み・例文・類語

ほう‐らく〔ホフ‐〕【法楽】

仏法を味わって楽しみを生じること。また、仏の教えを信受する喜び。釈迦が悟りを開いたのち1週間、自分の悟った法を回想して楽しんだことが原義
経を読誦どくじゅしたり、楽を奏し舞をまったりして神仏を楽しませること。また、和歌芸能などを神仏に奉納すること。
なぐさみ。楽しみ。放楽。「見るは法楽
見世物などが、無料であること。「法楽芝居」

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精選版 日本国語大辞典 「法楽」の意味・読み・例文・類語

ほう‐らく ホフ‥【法楽】

〘名〙
仏語。仏の教えを信受する喜び。仏の教えが生ずる喜び。
顕戒論(820)上「開悟一心法性本、自受法楽寂光」 〔維摩経‐上〕
② 仏語。仏の内証の喜び。仏が自らの悟りにひたる喜び。仏としてあることの喜び。
※正法眼蔵(1231‐53)弁道話「諸仏如来をしては、本地の法楽をまし」
③ (━する) 読経奏楽などによって神仏を楽しませること。また、神仏に和歌・連歌俳句・芸能などを奉納すること。
狭衣物語(1069‐77頃か)三「ほうらく荘厳のためとさへ、なり給へるも」
④ (転じて、一般に) 慰み。楽しみ。遊び。娯楽。放楽。
※雑俳・柳多留‐三一(1805)「なかふどはまあほふらくにみろと言い」
⑤ 見世物などを無料で見せること。ただ。
談義本当世下手談義(1752)一「毎年五月廿八日曾我祭とて、〈略〉其日見物にも、法楽に見する由」

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改訂新版 世界大百科事典 「法楽」の意味・わかりやすい解説

法楽 (ほうらく)

仏の教えを信じ行うことによってえられる喜び,楽しみを意味する仏教用語。本来は釈尊が悟りの直後に,みずからの悟った法(ほう)(真理)を思い楽しんだところから起こっている。欲望を満足させる〈欲楽〉の反対語である。教えを楽しむという本来の意味から転じて,日本では神仏を喜ばせる行為,すなわち読経(どきよう),奏楽,献歌などを法楽と呼ぶようになった。すなわち法要を終わるにあたり,来臨している神仏のためにとくに声明(しようみよう)曲を唱えたり,経や真言を誦したりするもので,《錫杖(しやくじよう)》や《般若心経》などがよく用いられる。おそらく平安時代からそのように呼ばれるようになったと考えられる。また神社の社殿でとくに一座の法要を営んで法楽とすることもあり,その際に,詩歌や芸能を添えることもある。さらに意味するところが広がり,寺社で演ずる入場無料の芸能も法楽という。芸能者が神に捧げるという形を取り,それが能ならば〈法楽能〉という。当日は参詣人が自由に陪観でき,芸能の普及に役だったと考えられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「法楽」の意味・わかりやすい解説

法楽
ほうらく

仏教語で、仏の教えを修めて自ら楽しむこと、または神仏の前で読経(どきょう)、奏楽などをして神仏を楽しませることをいう。転じて、近世以降は、神仏に奉納するために行う興行物全般をいうようになり、衆生(しゅじょう)に徳を施す意味から、その奉納の興行物を無料で見せること、あるいは見せ物興行などの見物を無料にすることをいう。また、多く「放楽」の字をあてて、慰みごとや楽しみ、遊び、娯楽をいうことばともなる。

[棚橋正博]

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