法語(読み)ホウゴ

デジタル大辞泉 「法語」の意味・読み・例文・類語

ほう‐ご〔ホフ‐〕【法語】

仏の教えを説いた語句・文章。
祖師・高僧などが仏法の要義を平易に説いた文章。和文体仮名法語)と漢文体とがある。

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精選版 日本国語大辞典 「法語」の意味・読み・例文・類語

ほう‐ご【法語】

〘名〙
[一] (ホフ:) 仏語。
道理にのっとって説かれた正しいことば。律語に対していう。
※米沢本沙石集(1283)五本「聖人の言、あに法語にあらざらむや、若法語ならば、義理を含べし」 〔大宝積経‐八二〕
② 禅家で、修行者を正しく指導するために垂れる教示の語、または文章。また広く諸宗でも、説き示したことば、文章にいう。法談。法話。
※正法眼蔵(1231‐53)安居「住持人、あるひは頌子、あるひは法語をかける」
[二] (ハフ:)
手本となる正しいことば。範として従うべきことば。法言。
※淡窓詩話(19C中)下「独り法語の言のみならず、〈略〉文を以て詩と為すもの、皆理屈なり」 〔論語‐子罕〕
② 法律学上の用語。法令上の用語。
③ (中国で、「フランス」に「法」の字をあてたところから) フランス語。
西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一一「最上なる法語(〈注〉フランスコトバ)の正音に熟せり」

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改訂新版 世界大百科事典 「法語」の意味・わかりやすい解説

法語 (ほうご)

正しい法を説く言葉の意で,祖師,高僧などが仏の教えを簡潔に表現した詩文のことである。唐宋間に仏家が韻語をもって演説したことに始まるので,おおむね詩を含む韻文であるが,のちに散文の法語,また日本では仮名文の法語も行われた。茶道墨跡との関連により,今日,特に喧伝されるのは禅宗における法語である。禅宗は本来,〈以心伝心,不立文字〉を建て前とする宗派であるが,宋代以後,禅僧が士大夫社会と交渉をもち文人趣味を取り入れ,詩文や書画によって悟りの境地を表現する風が高まると,多くの高僧たちがさまざまな形式の法語を説き示すにいたった。仏事における住持の説法,師が参学の衆徒に説き与える法語など,そのおもなものは次の通りである。〈上堂法語〉は歳旦,結夏,解夏,冬至の四節などに,住持が定期的に行う正式の説法。大参ともいう。〈小参法語〉は住持がどこでも臨時に行う小規模の説法。家訓ともいう。〈秉払(ひんぽつ)法語〉は正式の住持に代わり,払子(ほつす)を秉(と)って主席につき,大衆に説く法語。〈小仏事法語〉は拈香,点眼,掛額,安座,祖堂入牌,下火(あこ),起骨,掩土など,立ったままで行う小規模の仏事法語。立地法語とも呼んでいる。〈示衆法語〉は仏事には関係ないが,参学の衆徒に対して師が説き与える法語。垂示ともいう。勉学の徒を激励する警策,参禅修行ののち師のもとを辞去する弟子への送行の法語,進道語などもこの種の法語である。
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百科事典マイペディア 「法語」の意味・わかりやすい解説

法語【ほうご】

人々に向かって仏法を説く言葉。もともと中国で唐・宋の時代に韻文で語られたのを始めとするが,やがて散文化し,日本では《仮名法語》も多く著された。源信の《横川(よかわ)法語》は現存するものでもっとも古く,明恵法然一遍も仮名法語を残している。法語は文学作品との関係も深い。《一言芳談》は《徒然草》に影響を与え,無住の《妻鏡》は同じ著者の《沙石集》などとの関連が興味深い。江戸初期の鈴木正三の《盲安杖(もうあんじょう)》《万民徳用》などは物語草子との関連がうかがえる。
→関連項目撰集抄宝物集

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「法語」の意味・わかりやすい解説

法語
ほうご

本来は仏法の正しい道理にのっとって語られたことばの意。日本では、漢文による述作に対し、仮名文による仏教の述作をいう。仏法を日本の現実や日本人の生活に即してとらえ、日本語で仏法を語ろうとしたとき、仮名文による法語が成立した。仮名法語のもっとも早いものに、源信(げんしん)作と伝える『横川(よかわ)法語』があるが、盛んにつくられるようになったのは、民衆を対象に仏法が説かれるようになった鎌倉時代以後である。代表的作品には、法然(ほうねん)の『一枚起請文(いちまいきしょうもん)』、親鸞(しんらん)の語録『歎異抄(たんにしょう)』、一遍(いっぺん)の消息法語を含む『一遍上人(しょうにん)語録』、道元(どうげん)の『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』、日蓮(にちれん)遺文、『栂尾明恵(とがのおみょうえ)上人遺訓(いくん)』、『一言芳談(いちごんほうだん)』、無住がとくに婦人に示した法語『妻鏡』、証賢(向阿(こうあ))の『三部仮名鈔(さんぶかなしょう)』、蓮如(れんにょ)の『御文(おふみ)』などがある。

[伊藤博之]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「法語」の意味・わかりやすい解説

法語
ほうご

広義には仏教で正法を説く言語。狭義には仏教を大衆に向って平明に説いたもの。日本では漢文によるものは除外し,いわゆる「仮名法語」をさす。源信の『横川法語』のような平安時代の作もあるが,主として鎌倉時代の新興仏教の祖師あるいはその弟子たちによって書かれたもの。法然の『黒谷上人和語燈録』,道元の『正法眼蔵 (しょうぼうげんぞう) 』,懐弉 (えじょう) の『正法眼蔵随聞記』,日蓮の『立正安国論』など。また親鸞の言葉を弟子が記した『歎異鈔』,一遍の『一遍上人語録』,また法然,明遍ら 34人の言葉を集めた『一言芳談』などもその代表的なもの。

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世界大百科事典(旧版)内の法語の言及

【墨跡】より

…これも墨跡の類に入る。(2)文章形式のもの 韻文の形式になる法語,疏が多く,のちに散文のもの,また日本では仮名文の法語も行われた。(a)法語 さまざまな仏事における住持の説法,師匠が参禅の衆徒に説き与える法語,辞去する弟子に与える送行の法語,さらに衆徒を激励するための警策,進道語などがある。…

※「法語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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