泡雪・沫雪(読み)あわゆき

精選版 日本国語大辞典 「泡雪・沫雪」の意味・読み・例文・類語

あわ‐ゆき【泡雪・沫雪】

〘名〙
① 泡のように溶けやすいやわらかな雪。→泡雪の
万葉(8C後)八・一四二〇「沫雪(あわゆき)かはだれに降ると見るまでに流らへ散るは何の花そも」
源氏(1001‐14頃)行幸「堅きいはほもあはゆきになし給うつべき御気色なれば」
② 梨の品種の一つ。みずみずしく、雪をかむのに似るところからいう。
※雑俳・柳多留‐一二三(1833)「淡雪を不二形(なり)に積む水くゎしや」
③ 「あわゆきどうふ(泡雪豆腐)」の略。また、その料理を出す店。
※談義本・教訓続下手談義(1753)一「両国無縁寺へ這入角に淡雪(アハユキ)の見世がある」
※談義本・根無草(1763‐69)前「沫雪(アワユキ)の塩からく、幾世餠の甘たるく」
④ 「あわゆきかん(泡雪羹)」「あわゆきそば(泡雪蕎麦)」などの略。〔改正増補和英語林集成(1886)〕
[語誌](1)「万葉集」から「後拾遺集」までは多く冬の景物であったのが、「源氏‐若菜上」では女三宮が「はかなくて上の空にぞ消えぬべき風にただよふ春のあは雪」と、不安定な我身を今にも消えそうなはかない春の淡雪にたとえており、「新古今集」では春の景物に変わっている。その分岐点は「堀河百首」のころで、「沫雪」から「淡雪」への語義内容を膨らませながら季も変化を遂げたらしい。
(2)①の「源氏‐行幸」の例は記紀を踏まえた表現なので「沫雪」と解したが、②以下の意には「泡」「淡」が混用されており、便宜的に本項にまとめた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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