精選版 日本国語大辞典 「波・浪・濤」の意味・読み・例文・類語
なみ【波・浪・濤】
[1] 〘名〙
※古事記(712)上・歌謡「羽叩ぎも これは相応(ふさ)はず 辺つ那美(ナミ) 背(そ)に脱き棄て 鴗鳥(そにどり)の 青き御衣(みけし)を〈略〉辺つ那美(ナミ) 背に脱き棄て」
※土左(935頃)承平五年一月二七日「かぜふき、なみあらければ、ふねいださず」
② 海水のながれ。うしお。潮流。
③ 形状・様態などが波に類似するものをたとえていう。
(イ) 凹凸や起伏などが連続して見える山や雲などのさま。
※万葉(8C後)七・一〇六八「天の海に雲の波(なみ)立ち月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ」
(ロ) 老いて皮膚にできるしわ。
(ハ) 藤の花や稲の穂などのゆらぎ。
※古今(905‐914)春下・八九「さくら花ちりぬるかぜのなごりには水なきそらに浪ぞ立ちける〈紀貫之〉」
(ニ) 物事が広く行きわたること。次々と引き続き現われるさま。
※古今(905‐914)仮名序「あまねきおほんうつくしみのなみ、やしまのほかまで流れ」
(ホ) 世の騒ぎ。動乱。もめごと。ごたごた。
(ヘ) 感情や調子の、好い悪いの起伏。
(ト) はかないもの。うつろいやすいもの。泡沫。
※謡曲・江口(1384頃)「さては疑ひあら磯の、波と消えにし跡なれや」
(チ) 次々と押し寄せる時代、風潮などの動き。「時代の波」
※現代経済を考える(1973)〈伊東光晴〉II「巨大な技術革新の波が」
④ 波を模様化したもの。
(イ) 紋所の名。波を図案化したもので、向い波・波に兎・波に巴・立波などがある。
(ロ) 「なみまく(波幕)」の略。
※雑俳・柳多留‐七七(1823)「真っ白く浪によごれる道具かた」
(ハ) 「なみせん(波銭)」の略。
※雑俳・柳多留‐五二(1811)「相の山波の礫は江戸気性」
[2] (波) 小説。山本有三作。昭和三年(一九二八)発表。息子進の誕生をめぐる小学教師見並行介の心理的葛藤(かっとう)と精神的成長を描く。「妻」「子」「父」の三部から成る。
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