波来浜遺跡（読み）ならはまいせき

日本歴史地名大系

波来浜遺跡
ならはまいせき

• 島根県：江津市
• 後地村
• 波来浜遺跡

[現在地名]江津市後地町 波来浜

日本海沿岸に近い砂丘上で発見された弥生時代中・後期と古代・中世の墓地遺跡。昭和四六年（一九七一）から翌四七年に江津市教育委員会が発掘調査した。注目を集めているのは弥生時代の墓で、Ａ・Ｂの二調査区から六基・七基がそれぞれ発見されている。これらは長方形状（長辺約三―七メートル）に低く砂を盛上げて墳丘をつくり、その斜面に平たい石を貼りつけた特徴的な墳墓である。

出典　平凡社「日本歴史地名大系」

改訂新版　世界大百科事典

波来浜遺跡 (ならはまいせき)

島根県江津市後地に所在する弥生時代の埋葬遺跡。日本海岸沿いの砂丘上に位置し，1971-72年江津市教育委員会の調査で丘麓と丘頂の2ヵ所から各種の石囲い墳墓が検出された。砂丘麓には北側に砂止めと墓域を画するための長さ約15mの貼石列があり，一部しか調査されていないが，方形に石を貼りつけた墳墓5，無蓋箱式棺1が整然と並んでいる。このうち中心となる貼石墓の1基は，小規模ながら4m×5m，高さ約90cmの低い方形の墳丘をもち，被葬者は3人でおのおの土器1個を副葬する。他の5基は1人埋葬の無遺物の小墳墓。これに対し砂丘頂部は7基の方形列石墓からなり，いずれも無秩序に土壙が掘られ，埋葬人数は複数で墓上に土器等を伴うもののほか，多数の土器と銅鏃を納めた祭場とみられる石囲い等が検出されている。砂丘麓，頂部とも出土土器は弥生時代後期のもので，両者にみられる墳墓群のあり方や墳墓相互の差異は，当該時期の地域集団内部における階層分化の進展を示唆し，弥生時代から次の古墳時代社会への移行過程を考える上で重要な遺跡である。
執筆者：前島 己基

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」