注意欠陥・多動性障害(ADHD)(読み)ちゅういけっかんたどうせいしょうがいえーでぃーえいちでぃー

食の医学館 の解説

ちゅういけっかんたどうせいしょうがいえーでぃーえいちでぃー【注意欠陥・多動性障害(ADHD)】

《どんな病気か?》


〈抑制にかかわる脳の機能障害が原因〉
 全児童数の3%を占めるともいわれる注意欠陥(ちゅういけっかん)・多動性障害(たどうせいしょうがい)ADHD)は、不注意、多動性、衝動性(しょうどうせい)をおもな症状とする障害で、7歳未満の幼児期から起こりはじめる病気です。具体的な症状は、勉強や課題に集中することができず、必要なものをなくしたり、話しかけても聞いていないなど、不注意な態度が目立つことです。
 また、手足をしじゅうそわそわ動かしていたり、座っていなければならないときに席を立って走り回る(多動性)、他人会話や遊びを妨害する、順番を待てない(衝動性)などのようすがみられます。
 発症メカニズムはまだ明確にはわかっていませんが、抑制にかかわる脳の機能がなんらかの原因によりうまく働いていないために起こると考えられています。
 本人の努力の問題ではないので、むやみにたたいたり叱(しか)ったりせず、この障害について理解し、根気よく治療を行っていくことがたいせつです。

《関連する食品》


〈精神を安定させるアミノ酸、かんしゃくを抑える亜鉛〉
○栄養成分としての働きから
 ADHDの要因の1つに、セロトニンの不足が指摘されています。セロトニンは鎮痛(ちんつう)催眠(さいみん)、精神安定などに作用する脳内伝達物質です。
 このセロトニンをつくる原料となるのが、牛乳、チーズ、バナナなどに多く含まれているアミノ酸の一種トリプトファンです。実際、米国での臨床実験で、トリプトファンを投与したところ、集中力が高まるなど、行動障害の治療に有効に働いたという報告もあるようです。ただし、過剰にとると逆効果になるので、かたよった食事は禁物です。
 また、亜鉛(あえん)も有効とする報告があります。亜鉛が不足すると情緒不安定になり、かんしゃくを起こしやすくなります。亜鉛を多く含むカキレバー、牛や豚のもも肉などを積極的に食べさせるといいでしょう。
 神経の興奮を抑えるにはカルシウムも必要です。とくに肉類などのたんぱく質をとりすぎていると、カルシウムが排泄(はいせつ)されて不足しがちになります。牛乳、チーズなどの乳製品や小魚で補うようにします。
 必須脂肪酸のDHAは、脳組織の構成成分の1つであり、これが不足すると情報伝達がうまく機能しなくなります。DHAはマグロ、ブリ、サバに多く含まれています。
○注意すべきこと
 なお、チョコレートなどの甘いもののとりすぎ、あるいは合成着色料などの食品添加物がADHDを悪化させるという実験結果が数多くあり、こうしたものを避けた食生活が望ましいといえます。

出典 小学館食の医学館について 情報

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