洗眼(読み)せんがん

精選版 日本国語大辞典 「洗眼」の意味・読み・例文・類語

せん‐がん【洗眼】

〘名〙 目を洗うこと。蒸留水だけではなく、殺菌力を持つ硼酸水(ほうさんすい)食塩水などを使う場合もある。
※眼帯記(1936)〈北条民雄〉「吸入器を眼にかけて洗眼と罨法を同時に行ふのである」

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デジタル大辞泉 「洗眼」の意味・読み・例文・類語

せん‐がん【洗眼】

[名](スル)水や薬液で目を洗うこと。「硼酸水ほうさんすい洗眼する」

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改訂新版 世界大百科事典 「洗眼」の意味・わかりやすい解説

洗眼 (せんがん)

眼の結膜角膜の病気の治療や消毒の目的で,流水により洗い流す操作をいう。抗生物質発見以前には,治療のための有効な薬が少なく,結膜および角膜の表面についた細菌類を物理的に洗い落とす目的で頻用され,洗眼は眼科医の基本手技の一つであった。水にはホウ酸等を溶かして滅菌効果を高めた。しかし抗生物質の発見・発達後には,結膜,角膜の細菌性疾患には,点眼を主とする抗生物質が用いられるようになり,これが有効に作用することがわかってきた。また一方,洗眼することが,ある場合には感染を媒介することがあり,感染症の治療として洗眼が用いられることはきわめて少なくなった。現在,洗眼が多用されるのは,眼科手術の前に,手術をするところを消毒する場合である。グルコン酸クロルヘキシジン(商品名ヒビテン・グルコネート液)を0.02%くらいに薄めた液を流すとともに,手指,綿等でこすりつつ洗浄する。

 洗眼が最も効果を発揮するのは,眼に酸・アルカリの薬品が入った眼薬傷の時である。この場合,理論的には,酸が入れば弱アルカリの炭酸水素ナトリウム液,アルカリに対してはホウ酸の水溶液で洗うのがよい。しかし,そうした用意がなされていることはまれであり,多くの場合は水道水を使うことになる。水道ホースをつけ,分秒を争って,大量の水で勢いよく洗い流すことがたいせつである。これにより,酸・アルカリの組織内への侵入最小限におさえられる。これは,その後の予後をよくするためにぜひとも必要なことである。
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普及版 字通 「洗眼」の読み・字形・画数・意味

【洗眼】せんがん

眼を洗い、くわしく見る。宋・梅尭臣〔河南受代前一日、(謝)希深に詩を示す〕詩 眼を洗ひて書を看る 怡然(いぜん)として宇

字通「洗」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「洗眼」の意味・わかりやすい解説

洗眼
せんがん

眼瞼(がんけん)(まぶた)や結膜嚢(のう)を洗浄する処置をいう。洗浄液には生理食塩液、ホウ酸水などが用いられる。目やに、有害物質を洗い去るのが目的である。とくに有害物質に対しては救急処置として洗眼は必須(ひっす)である。かつては眼外部疾患には洗眼が広く行われ、目やにを除き、薬物が粘膜面に到達しやすくする効果を目的とした。しかし、たとえばウイルス性結膜炎では、有効な薬物がないほか、洗眼によって汚染の機会が増し、院内感染を助長することもあり、眼科処置としての洗眼は現在あまり行われなくなった。

[内田幸男]

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