浄化槽(読み)じょうかそう(英語表記)septic tank

精選版 日本国語大辞典 「浄化槽」の意味・読み・例文・類語

じょうか‐そう ジャウクヮサウ【浄化槽】

〘名〙 終末下水処理場を持たない地域で、屎尿などを沈殿分離・無機物化し、有毒菌を殺して放流、もしくは吸い込ませる槽。屎尿浄化槽
※人の子にねぐらあり(1954)〈清水一〉便所「糞尿屋外の浄化槽に貯へられる様になった」

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デジタル大辞泉 「浄化槽」の意味・読み・例文・類語

じょうか‐そう〔ジヤウクワサウ〕【浄化槽】

河川・湖沼の水や地下水を浄化して、飲料水とするための水槽。
下水処理場につながらない地域で、水洗便所の汚物を分解・消毒するための装置。

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改訂新版 世界大百科事典 「浄化槽」の意味・わかりやすい解説

浄化槽 (じょうかそう)
septic tank

汚水を集めて処理する施設のある公共下水道に直接連結できない地域で水洗便所を使用したいときは,水洗便所を設置する者が汚水を浄化する能力をもつ施設を設けなければならない。この施設を屎尿(しによう)浄化槽あるいは単に浄化槽という。すなわち,水洗便所より排泄(はいせつ)される屎尿は,下水道を経て終末処理場で衛生的に処理されるのが理想的であるが,下水道が未整備の地域において,浄化槽は補充的役割をもつ設備として発達してきた。日本で初めて浄化槽が設置されたのは明治末期であり,それ以後しだいに増加してきた。汚物処理槽あるいは汚物浄化槽と呼ばれた時代もあった。明治から大正にかけての浄化槽の役割は急性伝染病寄生虫病の予防に重点が置かれ,放流される水の消毒が第一義的に考えられ,水質保全との関係は第二義的なものであった。しかし,その後,公共用水域の水質保全の要請が高まるにつれて,浄化槽から出る水に対してきびしい水質が要求されるようになり,それに応ずるべく浄化槽の処理型式,処理方法および関係法規が改善,改正されてきた。今日新たに設置される浄化槽の多くは,下水道の終末処理場と同等以上の放流水質が得られる処理性能を有し,地域における生活排水処理システムのひとつとして位置づけられている。

 浄化槽の性能は建築基準法施行令により,地域の状況(3区域に区分)と処理対象人員に応じた処理水質(BODによる)とその除去率によって段階的に定められている。また,建設省告示によって性能基準を満足すると想定される能力をもつ浄化槽の構造が定められている。

 浄化槽は型式別に,屎尿のみを処理する単独処理のものと,屎尿と家庭雑排水をあわせて処理する合併処理のものに分けられる。単独処理浄化槽は,日本の便所の水洗化において広範に用いられ,これまでに設置された基数が最も多いが,その処理性能に限界があること,雑排水が未処理で放流されることなどから,放流先の水質汚濁を引き起こした。そのため,近年は合併処理浄化槽の設置が推進され,単独処理浄化槽の新設は廃止される方向にある。浄化槽には,処理対象人員5人の小規模から,数万人を超える大規模のものまであるが,設置基数は小規模ほど多い。

 浄化槽は,装置として単独処理浄化槽の特殊な場合を除いて,一次処理装置と二次処理装置に分けることができる。一次処理装置は沈殿分離室あるいは流量調整槽などであり,ここでは流入汚水が簡易な処理を受け,また二次処理装置へ流入する汚水の量と質の変動が緩和される。二次処理装置は,すべて生物学的な処理方法を主体としたもので,浮遊微生物を効果的に利用した活性汚泥法あるいは付着生物膜を利用した回転円板法,接触ばっ(曝)気法,散水ろ床法が用いられる。二次処理装置で処理された水はさらに消毒室で衛生上支障のないように消毒され放流される。一次処理装置と二次処理装置の組合せ,装置の規模および付属設備などは,目標とする処理水質,除去率によって異なり,前述の浄化槽構造の基準によって定められている。一方,浄化槽設置後は,期待どおりの処理水を確保するための維持管理方法などについては,浄化槽法の施行規則に詳細に規定されており,浄化槽からの放流水が公共用水域を汚染しないように配慮されている。放流水質は,浄化槽法に基づく放流水質基準,水質汚濁防止法に基づく排水基準および水質汚濁防止法に基づき都道府県が決めた排水基準(上乗せ基準)によって規制されている。
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化学辞典 第2版 「浄化槽」の解説

浄化槽
ジョウカソウ
digestion tank

し尿や生活雑排水などの汚水を,微生物などの生物処理により浄化する装置.下水道やコミュニティ・プラントが整備されていない地域では,事業所や住民からの排水を,浄化して河川などの公共水域に放流しなければならない.浄化槽は,腐敗槽,酸化槽,消毒槽からなり,腐敗タンク内で一次処理を行い,その流出液を酸化槽で二次処理する.廃液タンクの構造には,多室型,二階タンクなどがあり,沈殿性浮遊物質を除去する.二次処理の平面酸化によって,非沈殿性浮遊物質やコロイド性物質の除去と,硫化水素,アンモニアなどの悪臭成分を除去する.最後に,沈殿室で汚泥を沈殿させ,上澄みを消毒槽で消毒したのち放流する.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「浄化槽」の意味・わかりやすい解説

浄化槽
じょうかそう
sewage disposal tank; purifying facility

各家庭,小規模団地などで,屎尿を浄化して排出するために設けられる施設。腐敗槽,酸化槽,消毒槽と3段階に分けられ,沈殿,生物酸化,殺菌を行なって,浄化された水を放流する。 1970年代後半から,技術の向上が著しく,各種の方式が案出されているが,家庭用として動力を使った曝気式が普及している。便所から排出する汚物を,公共下水道以外に放流するには,衛生上支障のない浄化槽で浄化することが建築基準法で定められ,市街地では生物化学的酸素要求量 BOD30~90ppm以下と規制されている。

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百科事典マイペディア 「浄化槽」の意味・わかりやすい解説

浄化槽【じょうかそう】

下水浄化設備の一つ。下水処理施設の完備していない地域で水洗便所を使用する場合,屎尿(しにょう)を一時貯留・浄化してから放流しなければならないが,このための施設を屎尿浄化槽あるいは単に浄化槽という。生活排水のうちの屎尿だけを処理する単独処理浄化槽と,雑排水をも併せ処理する合併処理浄化槽に分けられ,建築基準法,浄化槽法によって構造や処理方式,処理能力などが細かく規定されている。
→関連項目便所

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リフォーム用語集 「浄化槽」の解説

浄化槽

トイレの汚水や台所からの排水を下水道へ直接放流できない地区において、汚水などを微生物の活動を利用して下水道へ放流できる状態まで浄化する設備。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「浄化槽」の意味・わかりやすい解説

浄化槽
じょうかそう

屎尿浄化槽

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