消化吸収試験(読み)しょうかきゅうしゅうしけん(英語表記)absorption tests

改訂新版 世界大百科事典 「消化吸収試験」の意味・わかりやすい解説

消化吸収試験 (しょうかきゅうしゅうしけん)
absorption tests

種々の消化器疾患や消化管手術後などに栄養障害が起こることがあるが,その原因は消化障害による場合と吸収障害により起こる場合に大別される。これらの原因を鑑別し,また,その程度を判定する方法を消化吸収試験という。一定量の脂質,またはタンパク質を含むよう調理された試験食を被検者にある期間食べさせ,この間に排出された糞便中の未消化の脂質またはタンパク質の量を測定し,摂取された量に対する排出率から消化吸収障害の有無をみる方法(出納試験balance study)が,現在のところいちばん自然に近く,最も正確な方法とされている。また,放射性同位体である131Iを結合させた一定量の脂肪131I-トリオレイン),あるいはタンパク質(131I-アルブミン)を摂取させた後,一定間隔で採取された血液中の131Iの量や,あるいは排出された糞便中に残存する131Iの量を放射線測定器を用いて測定し,摂取された131Iの量に対する吸収率,あるいは排出率を算定して,消化吸収能をみる方法もしばしば用いられている。

 各種の栄養素を含む通常の食物の消化吸収動態をみることは困難なので,通常,脂質あるいはタンパク質など1栄養素のみを含む試験食の消化吸収能をもって各人の消化吸収能と考えることが多いが,消化吸収障害は,通常,脂質,タンパク質,糖質の順に起こるとされているので,脂質の出納試験,あるいは131I-トリオレイン試験の精度が最も高いとされる。このほか,吸収機能のみを測定する試験法として,糖質の吸収能をみるD-キシロース試験,ビタミンB12の吸収能をみるビタミンB12負荷試験(シーリング試験),また,鉄の吸収能をみる鉄吸収試験なども行われる。消化吸収試験はそれ単独で行うよりも,バリウム消化管造影,消化管内視鏡検査,組織生検,腹部血管造影,リンパ管造影,肝機能検査腎機能検査膵機能検査などの検査と並行して行われるとさらに病態の理解が容易となる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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