液滴模型(読み)エキテキモケイ

化学辞典 第2版 「液滴模型」の解説

液滴模型
エキテキモケイ
liquid drop model

核を構成する核子間にはたらく核力が,短距離性でかつ飽和性を示すことや,表面の存在など,液滴との類似性をもとにする原子核の半経験的モデル.このモデルによれば,核分裂は核子の集団的振動が引き起こす核の変形極限として起こると半定性的に説明できる.核の質量を与える公式など,核構造の理解を進めるうえで重要な役割を果たした.H. BetheとC.F.von Weizsäckerが1935年に,N. Bohr(ボーア)が1936年に提唱した.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「液滴模型」の意味・わかりやすい解説

液滴模型
えきてきもけい
liquid drop model

原子核の模型の1種。原子核の体積質量数に比例するので,陽子中性子が密集して結合した原子核は液滴に似た挙動をする。液滴の表面エネルギー (表面張力) に対応して,原子核の結合エネルギーには,表面積に比例する項が含まれる。液滴の一部に与えられたエネルギーは短時間に全体に分配されて液滴の温度が上がり,次いで一部の分子が蒸発するが,核反応を同様の過程として扱ったのが蒸発理論である。核分裂も液滴の分裂と同様に取扱うことができる。

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世界大百科事典(旧版)内の液滴模型の言及

【原子核】より


[原子核物理学の発達]
 この分野の研究は,その後続々と発見された新しい粒子と,その間の相互作用を扱う素粒子物理学と原子核そのものを研究対象とする原子核物理学とに分かれ,後者では,原子核のさまざまな性質を核力から出発して説明しようとする基礎論と,比較的簡単な模型(原子核模型)によって観測されている事実を系統的に記述しようとする現象論とが並行して発達した。原子核模型としては,まず,原子核の核子密度や核子当りの結合エネルギーが質量数にあまり依存しないという飽和性から,原子核を液滴で近似する液滴模型が提唱され,この模型は原子核のおおまかな性質を説明するのに成功すると同時に,核分裂過程,原子核の集団運動,さらには最近の重い原子核どうしの衝突などを記述する模型の出発点となっている。一方,陽子数または中性子数が魔法数と呼ばれる特別の数となる原子核は安定であることや原子核のスピンを説明するために,原子で成功した殻模型がM.G.メイヤー,H.D.イェンゼンによって導入された。…

【原子核模型】より

…原子核はほぼ陽子と中性子(総称して核子という)からできているが,原子核模型は,この核子間の相関の考え方から集団(運動)模型,独立粒子模型,クラスター模型に分類できる。 集団運動模型は核子間には強い相関があるとする立場に基づくもので,これには液滴模型,変形核模型などがある。前者は原子核の質量や体積が構成核子の数に比例し,また核子間に働く核力が短距離力であり飽和性をもつことなど,その性質が液体と似ていることから原子核を液滴で近似して取り扱うもので,N.ボーアらは,この模型を用いてウランなど重い原子核の核分裂を説明した。…

※「液滴模型」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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