混合仲裁裁判所(読み)こんごうちゅうさいさいばんしょ(英語表記)mixed arbitral tribunal

改訂新版 世界大百科事典 「混合仲裁裁判所」の意味・わかりやすい解説

混合仲裁裁判所 (こんごうちゅうさいさいばんしょ)
mixed arbitral tribunal

第1次大戦後の平和諸条約に基づき,連合国と旧敵国(ドイツ)との間に一定部類の事件を裁判するために設置された国際裁判所混合仲裁委員会,混合請求(権)委員会ともいう。裁判所は3人の裁判官で構成され(その長は両関係国政府の合意で選任するほか,他は関係国政府が各1人任命する),平和諸条約に規定された金銭債務財産・権利・利益・契約等に関する紛争を裁判した。個人の出訴権も認められる点に特徴があり,同盟および連合国の国民は,戦時非常措置または移転措置の適用による旧敵国領土内の財産的損害賠償を求めて出訴することができた。このほか,第2次大戦後の対日平和条約に基づき,日本国内にある連合国および連合国国民の財産や権利の返還または補償に関して生ずる紛争の処理のために,日本と関係の各連合国との間に3人の委員から成る財産委員会が設置された。この委員会に対する出訴権は,個人には認められず,連合国政府に限られた。この委員会も混合仲裁裁判所の一種である。
国際裁判
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「混合仲裁裁判所」の意味・わかりやすい解説

混合仲裁裁判所
こんごうちゅうさいさいばんしょ
Mixed Arbitral Tribunal

戦争によって生じた戦勝国民の私法上の請求権について審理する裁判所で,第1次世界大戦講和条約によって設けられ,ドイツが戦勝国民に与えた損害について被害者個人が賠償要求を提起し,仲裁裁判に訴える裁判所として注目された。混合請求小委員会あるいは混合仲裁委員会とも呼ばれ,連合国とドイツなどとの間にそれぞれ2国間ごとに設置された混合仲裁裁判所が著名である。一連の事件が解決するまで存続した常設裁判所であったこと,および個人が直接に出訴権を認められたことに大きな特色がある。

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世界大百科事典(旧版)内の混合仲裁裁判所の言及

【国際裁判】より

…第1次大戦後,真に常設的な裁判所で,普遍的なものとして,常設国際司法裁判所(PCIJ)が設置され,第2次大戦後にこれを継承したのが国際司法裁判所(ICJ)である。このほか,特別の裁判所として,1907年に立案された国際捕獲審検所(捕獲),08年から10年間存続した中米司法裁判所,第1次大戦後の混合仲裁裁判所,第2次大戦後に戦争犯罪人処罰のために設けられた国際軍事裁判所および極東国際軍事裁判所があり,また48年のジェノサイド条約では国際刑事裁判所の設置が予定されているが,まだ実際には設けられていない。なお,1996年国連海洋法条約発効に伴い,ハンブルクに国際海洋法裁判所が設置された。…

※「混合仲裁裁判所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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