清岡卓行(読み)キヨオカタカユキ

デジタル大辞泉 「清岡卓行」の意味・読み・例文・類語

きよおか‐たかゆき〔きよをか‐〕【清岡卓行】

[1922~2006]小説家詩人中国大連の生まれ。大連を追想した「アカシヤの大連」で芥川賞受賞。他に小説海の瞳」「マロニエの花が言った」、詩集「日常」「パリの五月に」など。芸術院会員。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「清岡卓行」の意味・わかりやすい解説

清岡卓行
きよおかたかゆき
(1922―2006)

詩人、小説家。満州(現中国東北地方)大連(だいれん)生まれ。高知を父母の生地とする。大連一中、一高を経て、東京帝国大学仏文科に進み、大連の両親のもとに帰省中に敗戦(第二次世界大戦)を迎える。日本野球連盟勤務、法政大学フランス語教授などを経て文筆生活にはいる。雑誌『現代評論』『今日』『現代詩』に参加。大岡信飯島耕一吉岡実岩田宏と同人誌『鰐(わに)』を創刊。第一詩集『氷った焔(ほのお)』(1959)は、妻となった女性を純粋昇華した形で歌った。おもな詩集に『日常』(1962)、『四季のスケッチ』(1966)、『固い芽』(1975)、『パリ五月に』(1991)がある。選詩集に現代詩文庫『清岡卓行詩集』『続・清岡卓行詩集』『続続・清岡卓行詩集』。1969年(昭和44)に愛する妻を喪(うしな)った悲しみを散文化した小説『朝の悲しみ』を書き、ついで発表した『アカシアの大連』(1969)で第62回芥川(あくたがわ)賞を受賞。作風は知的に抑制され、詩人らしく透明でやや抽象的な叙情性に富む。他の小説に『フルートオーボエ』(1971)、一高の後輩原口統三(とうぞう)(1927―46)を主人公とする『海の瞳(ひとみ)』(1971)、『花の躁鬱(そううつ)』(1973)、恩師で漢詩人の阿藤伯海(あとうはっかい)(1894―1965)への敬愛の念をうたった伝記小説『詩礼伝家』(1975)。引揚げ後三十数年ぶりの大連再訪で得た『大連小景集』(1983)は、一見個人的回想旅行記にみえながら、背後から近代日本の歴史が浮き出る小説集。『マロニエの花が言った』(1999)で第52回野間文芸賞受賞。また紀行文集『芸術的な握手』(1978)で第30回読売文学賞受賞。評論集に『手の変幻』(1966)、『抒情(じょじょう)の前線』(1970)、『萩原朔太郎(さくたろう)「猫町」私論』(1974)などがあり、訳詩集に『ランボー詩集』(1968)がある。野球好きでも知られ、セントラル・リーグ試合日程編成者時代に「猛打賞」を考案した。日本芸術院会員。

[吉田文憲]

『『日常』(1962・思潮社)』『『現代詩文庫5 清岡卓行詩集』(1968・思潮社)』『『現代詩文庫126 続・清岡卓行詩集』(1994・思潮社)』『『現代詩文庫165 続続・清岡卓行詩集』(2001・思潮社)』『『抒情の前線――戦後詩十人の本質』(1970・新潮社)』『『フルートとオーボエ』(1971・講談社)』『『花の躁鬱』(1973・講談社)』『『詩集 固い芽』(1975・青土社)』『『芸術的な握手――中国旅行の回想』(1978・文芸春秋)』『『大連小景集』(1983・講談社)』『『猛打賞――プロ野球随想』(1984・講談社)』『『円き広場――初期詩集』(1988・思潮社)』『『清岡卓行詩集 パリの五月に』(1991・思潮社)』『『萩原朔太郎「猫町」私論』(1991・筑摩書房)』『『清岡卓行大連小説全集』上下(1992・日本文芸社)』『『マロニエの花が言った』上下(1999・新潮社)』『『海の瞳――原口統三を求めて』(文春文庫)』『『手の変幻』『アカシアの大連』『詩礼伝家』(講談社文芸文庫)』『大岡信・谷川俊太郎編『現代の詩人 清岡卓行』(1983・中央公論社)』『アルテュール・ランボー著、清岡卓行訳『ランボー詩集』新編(1992・河出書房新社)』

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百科事典マイペディア 「清岡卓行」の意味・わかりやすい解説

清岡卓行【きよおかたかゆき】

詩人,小説家。満州(中国東北部)生れ。東大仏文科卒。大連で敗戦をむかえ,1948年に引き揚げ。日本野球連盟に勤めながら,大学を卒業。第1詩集《氷った焔》(1959年)をはじめとして詩作を続けるが,47歳で小説も書き始め,《アカシアの大連》(1969年)で第62回芥川賞を受賞。詩人的な感性に支えられた小説として評価される。また,1984年に詩集《初冬の中国で》で現代詩人賞受賞。
→関連項目大岡信

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「清岡卓行」の解説

清岡卓行 きよおか-たかゆき

1922-2006 昭和後期-平成時代の詩人,小説家。
大正11年6月29日中国大連生まれ。昭和34年詩集「氷った焔(ほのお)」で注目される。45年亡き妻と大連を追想した「アカシヤの大連」で芥川賞。54年中国紀行「芸術的な握手」で読売文学賞。60年「初冬の中国で」で現代詩人賞。平成11年「マロニエの花が言った」で野間文芸賞。15年詩集「一瞬」と短編集「太陽に酔う」で毎日芸術賞。芸術院会員。平成18年6月3日死去。83歳。東大卒。作品はほかに「海の瞳」「詩礼伝家」,エッセイに「手の変幻」。

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