温石(読み)おんじゃく

精選版 日本国語大辞典 「温石」の意味・読み・例文・類語

おん‐じゃく ヲン‥【温石】

〘名〙
① からだを暖める用具の一つ。蛇紋石軽石などを火で焼いたり、またその石の代わりに菎蒻(こんにゃく)を煮て暖めたりして、布に包んで懐中するもの。焼き石。《季・冬》 〔文明本節用集(室町中)〕
俳諧続猿蓑(1698)春「温石(オンジャク)のあかるる夜半はつ桜露沾〉」
② (温石はぼろに包んで用いるところから) ぼろを着ている人をあざけっていう。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「温石」の意味・読み・例文・類語

おん‐じゃく〔ヲン‐〕【温石】

軽石などを焼いて布などに包み、懐に入れたりしてからだをあたためるもの。焼き石。 冬》草庵に―の暖唯一つ/虚子

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「温石」の意味・わかりやすい解説

温石
おんじゃく

体を暖める用具。蛇紋石(じゃもんせき)などを温め、布や綿に包み、懐(ふところ)に入れる。軽石や滑石(かっせき)などを火で焼いたり、こんにゃくを煮て、代用品にしたりした。「薬用に用いる、ある種の青い滑らかな小石」(『日葡(にっぽ)辞書』)、「夏の温石と傾城の心とは冷たい」(『譬喩尽(ひゆづくし)』3)などといわれた。塩(しお)温石、焼石などとともに俳諧(はいかい)の冬の季語である。「温石のあかるる夜半やはつ桜」(『続猿蓑(さるみの)』、露沾(ろせん))「草奄(そうあん)に温石の暖唯(ただ)一つ」(高浜虚子)。転じてぼろ裂(ぎれ)に包むところから、粗末な服装をあざける言葉ともなっている。

[岡田袈裟男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の温石の言及

【懐炉】より

…医学上一種の熱罨法(ねつあんぽう)として腹痛,神経痛などにも利用される。古くは焼石や温石(おんじやく)などが使われていたが,元禄(1688‐1704)初めころ保温力の強いイヌタデやナスの茎などの灰(懐炉灰)に点火し金属性容器に密閉して燃焼させる懐炉が発明された。近代になると懐炉灰は桐灰,麻殻灰,ゴマ殻灰,わら灰,ヨモギ灰などに助燃剤を加えて紙袋に詰めたものに改良された。…

※「温石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android