湯ノ峰(読み)ゆのみね

改訂新版 世界大百科事典 「湯ノ峰」の意味・わかりやすい解説

湯ノ峰[温泉] (ゆのみね)

和歌山県田辺市の旧本宮町にある温泉。重曹を含んだ硫黄泉で,泉温は92℃。リウマチや皮膚病などに効能があるとされる。成務天皇の時代に発見されたという伝えがある。熊野街道中辺路(なかへじ)に沿い,熊野本宮大社が北西約2kmにある。熊野詣の湯垢離場(ゆごりば)で,熊野御幸の上皇をはじめ貴族らの入湯史料にみえる。説経《小栗判官》などにより,餓鬼の姿となった小栗判官がこの湯で元の身になったという話は広く知られる。温泉のほぼ中央にある東光寺の本尊は湯の華が石化したものといい,〈湯ノ胸薬師〉とよばれる。同寺には熊野九十九王子の一つ湯ノ峰王子もまつられた。湯ノ峰川を挟んで寺の筋向いには〈一遍上人爪書きの名号〉といわれる磨崖碑がある。なお湯元一帯はユノミネシダ自生地として天然記念物に指定されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の湯ノ峰の言及

【温泉】より

…その行為は,敬虔なヒンドゥー教徒がガンジス川で沐浴し寺院のそばの池の水で身を清めるのと同様の象徴的な意味をもっている。 第2に日本の事例をあげると,紀州熊野の湯ノ峰温泉は熊野もうでの巡礼が最後にたどりつくべき聖泉であった。餓鬼身の小栗判官が照手姫に伴われて湯ノ峰の湯壺に身をひたすと,熊野権現があらわれその霊験によって五体が元通りになったという話はよく知られている。…

※「湯ノ峰」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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