潮・汐(読み)うしお

精選版 日本国語大辞典 「潮・汐」の意味・読み・例文・類語

うしお うしほ【潮・汐】

〘名〙 (「潮」は朝しお、「汐」は夕しおをいう)
① 月と太陽との引力によって海水が定期的に満ちたり引いたりして生ずる潮流
書紀(720)斉明四年一〇月・歌謡水門(みなと)の 于之裒(ウシホ)の下り 海下り」
② 海水。
※書紀(720)仁徳一一年四月(前田本訓)「聊(いささか)霖雨(ながめ)に逢へば、海潮(ウシホ)逆上(さかのぼ)って巷里(むらさと)船に乗り」
平家(13C前)灌頂「大海にうかぶといへども、うしほなればのむ事もなし」
③ 海水より製した塩。
※書紀(720)武烈即位前(図書寮本訓)「広く塩(ウシほ)を指して詛(のろ)ふ。〈略〉角鹿の海の塩(うしほ)をのみ忘れて詛はず。是に由りて、角鹿の塩は、天皇の所食(おぼの)と為し」
※雑俳・柳多留‐八(1773)「おどり子を味噌とうしほの間(あ)いへ出し」
⑤ (①を比喩的に用いて)
(イ) 多量に寄せてくるもののたとえ。
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉夏「見る見るプラットホオムを真黒になって出て来る群衆の潮(ウシホ)は」
(ロ) 感情など高まったり、しずまったりするもののたとえ。
明暗(1916)〈夏目漱石〉一五〇「彼女興奮は漸く食ひ留められた。感情の潮(ウシホ)がまだ上りはしまいかといふ掛念で、暗に頭を悩ませてゐた津田は助かった」

しお しほ【潮・汐】

〘名〙 (漢字表記「潮」は朝しお、「汐」は夕しおの意)
海面が月と太陽の引力によって周期的に高くなったり低くなったりして、海水が岸また沖の方へ交互に動くこと。また、海流の動き。潮流。海水の流れ。うしお。
※古事記(712)中「此の塩(しほ)の盈(み)ち乾(ひ)るが如(ごと)く、盈ち乾(ひ)よ」
② 海の水。海水。うしお。
※古事記(712)上「塩(しほ)許々袁々呂々邇(こをろこをろに)〈此の七字は音を以ゐよ〉画(か)き鳴し〈鳴を訓みてなしと云ふ〉て引き上げたまふ時、其の矛の末(さき)より垂り落つる塩(しほ)累積もりて島と成る」
③ あることをするのにちょうどよい時。よいおり。よい機会。頃あい。時節。しおどき。しおあい。
散木奇歌集(1128頃)恋上「水の海とおつる涙は成りにけりあふべきしほもなきと聞くより」
④ あいきょう。愛想。愛らしさ。また、情趣。
※九州問答(1376)「しほのありてこつがましき人の物云たると、しほもなく無故実なる人の物云たるとは同事なりとも、更に別の物にてあるべき也」
⑤ 江戸時代、大坂新町遊里の下級遊女の階級太夫・天神・鹿恋(かこい)の次で影・月(がち)の上。揚げ代が三匁であったところから、謡曲松風」の「月は一つ、影は二つ、三つ汐の」の文句にかけていった語という。
浮世草子御前義経記(1700)一「端女郎は鹿恋(かこひ)より下〈略〉位は一を壱寸とも月(ぐゎち)ともいふ。二は二寸共かげ共いふ。三を三寸とも塩(シホ)共いひ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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