濃漿(読み)こんず

精選版 日本国語大辞典 「濃漿」の意味・読み・例文・類語

こんず こんづ【濃漿】

〘名〙 (「こみず(濃水)」の変化した語)
① 米を煮た汁。おもゆ。こみず。〔書陵部本名義抄(1081頃)〕
② 粟(あわ)糯米(もちごめ)などで醸造した酢(す)早酢(はやず)
※俳諧・七柏集(1781)環流亭興行「漿水(コンズ)かと銀の瓶子の口切て〈連丈〉 折から雨に留守のつれづれ〈一兆〉」
③ (濃い水の意) 酒の異称
※日蓮遺文‐秋元殿御書(1280)「雪を盛りて飯と観じ、水を飲てこんずと思ふ」
④ 濃い汗。大粒の汗。したたり落ちる汗。
浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)四「素鑓(すやり)片鎌(かたかま)手毎に引っ提、上段下段に突かくるを、彼方こなたと切払らひ、こんづを流し手を砕き半時ばかりぞいどみしが」

こく‐しょう ‥シャウ【濃漿】

〘名〙 料理一種。肉や魚などをよく煮込んだ濃い味噌汁で、鯉を汁の実とした鯉の濃漿は有名。こくしお。《季・冬》 〔茶湯献立指南(1696)〕

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デジタル大辞泉 「濃漿」の意味・読み・例文・類語

こんず〔こんづ〕【×漿】

《「こみず(濃水)」の音変化》
米を煮た汁。おもゆ。
粟やもち米などで醸造した酢。早酢はやず
の異称。
「天の―ともいふべきほどの酒をいだし」〈黄・栄花夢
濃い汗。大粒の汗。
「―を流し手を砕き、半時ばかりぞ挑みしが」〈浄・源頼家源実朝鎌倉三代記

こく‐しょう〔‐シヤウ〕【濃×漿】

魚や野菜などを煮込んだ濃い味噌汁。鯉こくなど。

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「濃漿」の解説

こくしょう【濃漿】

肉や魚などをよく煮込んだ、濃いみそ汁。鯉(こい)こくが有名。

出典 講談社和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の濃漿の言及

【コイ(鯉)】より

…車下の鯉はほかの鯉と違って,いくら食べても煎酒が濁らなかったという。江戸後期にはふつうの刺身よりは洗いが賞美され,濃漿(こくしよう)ももてはやされた。洗いは洗い鯉と呼ばれ,江戸では向島の葛西太郎,大黒屋孫四郎などの料理茶屋が有名であった。…

【ナマズ(鯰)】より

…〈なまずの身すきとりたたき,じねんじよすり入,玉子の白味入れよせるなり〉という製法が《料理早指南三編》(1802)に見られる。この書はほかに蒲焼と濃漿(こくしよう)がよいとしており,これらはナマズなべとともに,現在でも行われている。濃漿は,コイこくに代表されるみそ汁の煮物である。…

【キジ(雉)】より

…なますは胸の肉を細切りにして用い,刺身は丸煮にしてむしり,サンショウみそ酢で供した。せんばは煎盤などと書くもので,煎酒(いりざけ),しょうゆなどでいり煮にしたもの,こくしょうは濃漿で,みそじたてで汁の多い煮物である。はふし酒(羽節酒)は羽の付け根のふしを焼いて酒に浸すもので,フグのひれ酒の類,つかみ酒は同様に腸を用い,みそを加えたものであった。…

※「濃漿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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