灰谷健次郎(読み)ハイタニケンジロウ

デジタル大辞泉 「灰谷健次郎」の意味・読み・例文・類語

はいたに‐けんじろう〔はひたにケンジラウ〕【灰谷健次郎】

[1934~2006]小説家・児童文学作家。兵庫の生まれ。小学校教諭を経て昭和49年(1974)に「兎の眼」を発表人権社会問題などについての発言も積極的に行った。他に「太陽の子」「ひとりぼっちの動物園」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「灰谷健次郎」の意味・わかりやすい解説

灰谷健次郎
はいたにけんじろう
(1934―2006)

児童文学作家。神戸市生まれ。大阪学芸大学(現大阪教育大学)卒業。17年間小学校教師を勤め、その間、児童詩誌『きりん』の編集に携わる。自らも詩や小説を書き、1965年(昭和40)、灰谷文学の原点ともいうべき『せんせいけらいになれ』を著す。74年不幸な境遇の子にヒューマンな愛情を注ぐ若い女教師を中心に今日的問題を扱った『兎の眼(うさぎのめ)』(日本児童文学者協会新人賞)を発表。幅広い読者層を得、続いて『太陽の子』(1978)もミリオンセラーとなる。78年『ひとりぼっち動物園』で小学館文学賞、79年その文学的業績によって第1回路傍の石文学賞を受賞。そのほかの作品に、17年間の教師生活を通じて知った子供たちについてつづった『わたしの出会った子どもたち』(1981)、15年の歳月をかけて完成させた自然賛歌の『島物語』全5冊(1983~98)、『我利馬(ガリバー)の船出』(1986)、詩集に『きりんの詩集 子どもの詩が生まれた』3冊(1986)など、エッセイ対談・評論集に『灰谷健次郎エッセイ集 島へゆく』『同 島で暮す』(1981、82)、教育哲学者・林竹二(1906―85)との対談『対談 教えることと学ぶこと』(1979)、『灰谷健次郎アクショントーク わたしの子ども時代・青春時代』(1990)、『林先生に伝えたいこと』(1991)などがある。

 1990年代後半以降には、『はるかニライ・カナイ』(1997)や長編小説『天の瞳(ひとみ)』がある。『天の瞳』は、1996年(平成8)に新潮社から「幼年編」が発刊されたが、98年版権を角川書店に移し「幼年編」「成長編」から2004年の「あすなろ編2」まで発刊された。エッセイ集に『優しい時間』(1996)、『いのちまんだら』(1998)、石川文洋(ぶんよう)(1938― )写真アジア紀行『アジアを生きる』(2001)など。全集などとして、『灰谷健次郎の本』全24巻(1987~89)、『灰谷健次郎童話館』13冊(1994~95)、『灰谷健次郎の発言』8冊(1999)がある。

西本鶏介

『『せんせいけらいになれ――詩のコクバン』(1965・理論社)』『『兎の眼』(1974・理論社)』『『太陽の子』(1978・理論社)』『『短編集 ひとりぼっちの動物園』(1978・あかね書房)』『『わたしの出会った子どもたち』(1981・新潮社)』『『灰谷健次郎エッセイ集 島へゆく』『灰谷健次郎エッセイ集 島で暮す』(1981、82・理論社)』『『島物語1 はだしで走れ』『島物語2 今日をけとばせ』『島物語3 きみからとび出せ』『島物語4 ほほ笑みへかけのぼれ』『島物語5 とべ明日へ』(1983~98・理論社)』『『我利馬の船出』(1986・理論社)』『『きりんの詩集 子どもの詩が生まれた』3冊(1986・理論社)』『『灰谷健次郎の本』全24巻(1987~89・理論社)』『『海の物語1 海の歌がきこえてくる』『海の物語2 あした呼ぶ海へ』(1988・金の星社)』『『海の図』上下(1988・理論社)』『『灰谷健次郎アクショントーク わたしの子ども時代・青春時代』(1990・社会思想社)』『『林先生に伝えたいこと』(1991・新潮社)』『『舟で想う、畑で考える――自給自足をたのしむ心と体』(1993・第三書館)』『『灰谷健次郎童話館』13冊(1994~95・理論社)』『『優しい時間』(1996・読売新聞社)』『『すべての怒りは水のごとくに』(1997・倫書房)』『『はるかニライ・カナイ』(1997・理論社)』『『天の瞳 幼年編1・2』『天の瞳 少年編1・2』『天の瞳 成長編1・2』『天の瞳 あすなろ編1・2』(1998~2004・角川書店)』『『いのちまんだら』『いのちまんだら アメリカ嫌い』(1998、99・朝日新聞社)』『『灰谷健次郎の発言』8冊(1999・岩波書店)』『『アジアを生きる』(2001・実業之日本社)』『『風の耳朶』(2001・理論社)』『林竹二・灰谷健次郎著『対談 教えることと学ぶこと』(1979・小学館)』『清水真砂子著『子どもの本の現在』(1984・大和書房)』『萬屋秀雄著『現代児童文学の展開――現代児童文学作家論2』(1986・大阪教育図書)』『小倉知加子著『風を野に追うなかれ』(1989・講談社)』『岡田純也著『子どもの本の魅力――宮沢賢治から安房直子まで』(1992・KTC中央出版)』『神宮輝夫著『現代児童文学作家対談7 今江祥智・上野瞭・灰谷健次郎』(1992・偕成社)』『立松和平著『立松和平対談集 風と話そう』(1993・家の光協会)』『倉本聡著『倉本聡・対談紀行 上流の思想・下流の思想』(1994・理論社)』『住井すゑ編『住井すゑ対話集2 土は生命の創まり』(1997・労働旬報社)』『『灰谷健次郎まるごと一冊』(『小説新潮』7月臨時増刊号・1997・新潮社)』『宮崎学著『突破者の条件』(1998・幻冬社)』『山田洋次著『対話 山田洋次1 人生はつらいか』(1999・旬報社)』『二瓶弘行著『文学読書単元「太陽の子」――学級だより500号の記録』(2001・東洋館出版社)』『立松和平著『立松和平対談集 現代の饗宴』(2002・随想舎)』

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百科事典マイペディア 「灰谷健次郎」の意味・わかりやすい解説

灰谷健次郎【はいたにけんじろう】

児童文学者,詩人。神戸市生れ。大阪学芸大卒。小学校教師時代,児童詩誌《きりん》編集のかたわら詩や小説を書く。17年間の教師生活を経て《兎の眼》(1974年)を発表,あるべき教育・教師像を追求して反響を呼び,日本児童文学者協会新人賞受賞。《太陽の子》(1978年)とともに,1979年第1回路傍の石文学賞受賞。他に,少年の成長を描く長編小説《天の瞳》,絵本《ろくべえまってろよ》,児童詩を扱った《せんせいけらいになれ》などがある。2006年11月,食道がんのため死去。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「灰谷健次郎」の解説

灰谷健次郎 はいたに-けんじろう

1934-2006 昭和後期-平成時代の児童文学作家。
昭和9年10月31日生まれ。47年,17年間つとめた神戸の小学校教師をやめ沖縄などを放浪。49年長編小説「兎(うさぎ)の眼(め)」を発表。子供たちと全力でむきあう女性教師像をえがき,ベストセラーとなった。ほかに「太陽の子」「子どもの隣り」など。54年第1回路傍の石文学賞。平成18年11月23日死去。72歳。兵庫県出身。大阪学芸大(大阪教育大)卒。

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