灰重石(読み)カイジュウセキ(英語表記)scheelite

翻訳|scheelite

デジタル大辞泉 「灰重石」の意味・読み・例文・類語

かい‐じゅうせき〔クワイヂユウセキ〕【灰重石】

カルシウムタングステン酸塩鉱物無色白色淡黄色などで透明ガラス光沢があり、紫外線を当てると青色蛍光を示す。錐状結晶が普通。正方晶系。タングステンの主な鉱石

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精選版 日本国語大辞典 「灰重石」の意味・読み・例文・類語

かい‐じゅうせき クヮイヂュウセキ【灰重石】

〘名〙 タングステンの主原料となる鉱物。成分 CaWO4 正方晶系。白、黄、淡黄、帯褐、帯緑、帯紅色などの錐状、板状、塊状結晶。透明または半透明のガラス光沢をもつ。ペグマタイト、石英金鉱脈中に産出する。重石。シェーライト。〔英和和英地学字彙(1914)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「灰重石」の意味・わかりやすい解説

灰重石
かいじゅうせき
scheelite

タングステン(W)の重要な鉱石鉱物の一つ。気成ないし高温熱水鉱床、接触交代鉱床(スカルン型鉱床)、ペグマタイト中に産する。気成ないし高温鉱床中のものは、石英脈中に存在し、鉄マンガン重石、輝水鉛鉱、錫(すず)石、硫砒(りゅうひ)鉄鉱、自然蒼鉛(そうえん)などとともに産し、接触交代鉱床中においては、灰鉄輝石、灰礬(かいばん)ざくろ石などと、あるいは磁硫鉄鉱黄銅鉱などとともに産する。モリブデン置換体の灰水鉛(かいすいえん)石とは化学組成上連続するが、中間物の空間群が異なることが明らかにされたため、従来変種名とされてきたセイリジ鉱seyrigiteが独立種となる可能性がある。自形は正方複錐(ふくすい)状。灰重石後の鉄重石仮晶をライン鉱reinite(化学式FeWO4)という。山梨県牧丘(まきおか)町(現、山梨市牧丘町)乙女鉱山の産出例は有名である。大きい比重、紫外線による発光などの性質から同定される。英名は、1781年に三酸化タングステンを本鉱中に確認したスウェーデンの化学者カール・ウィルヘルムシェーレKarl Wilhelm Scheele(1742―1786)にちなむ(元素タングステンの発見は1783年)。

[加藤 昭 2016年2月17日]


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改訂新版 世界大百科事典 「灰重石」の意味・わかりやすい解説

灰重石 (かいじゅうせき)
scheelite

主要なタングステン鉱石鉱物の一つ。化学組成CaWO4。カルシウムCaを銅Cuが,タングステンWをモリブデンMoがそれぞれ一部置き換えたものも存在する。正方晶系に属し,形は八面体を主とするが,板状,塊状または粒状集合体として産することも多い。透明または半透明で,ガラス光沢をもつ。色は白~淡黄で,褐色みや緑色みを帯びる。条痕は白色。へき開は{101}に明瞭。暗所で加熱したり,紫外線をあてると青色の蛍光を発する。蛍光色はモリブデン含有量が多くなるにつれて,青色から白色を経て黄色へと変化する。モース硬度4.5~5。カルシウムを含み,比重5.9~6.1と外観に似ず重いので,灰重石と命名された。世界のおもな産地は,中国,ミャンマー,アメリカ,ボリビア,ブラジルなど。日本では京都府大谷鉱山,山口県玖珂(くが)鉱山,藤ヶ谷鉱山などに産する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「灰重石」の意味・わかりやすい解説

灰重石
かいじゅうせき
scheelite

CaWO4 。正方晶系の鉱物。比重 6.10,硬度 4.5~5。ガラス光沢をもち,無色,白,黄白,褐色,ときに灰,橙黄,緑色を示す。タングステンの最も重要な鉱石の一つで,気成・熱水鉱床またはペグマタイト鉱脈鉱床に産する。英名は 1781年,この鉱物中にタングステン酸を発見したスウェーデンの化学者 K.シェーレにちなんで命名された。

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百科事典マイペディア 「灰重石」の意味・わかりやすい解説

灰重石【かいじゅうせき】

重要なタングステンの鉱石鉱物。組成CaO・WO3で,MoがWの一部を置換。正方晶系で,通常八面体結晶。硬度4.5〜5で,へき開は明瞭。ガラス光沢をもち透明,無色かまたは白・緑・褐色。加熱したり,紫外線をあてると青白色の蛍光を発する。ペグマタイト,気成・熱水鉱床に産する。中国,ミャンマー,米国,ボリビア,ブラジルなどに多く産する。

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