為替の自由化(読み)かわせのじゆうか(英語表記)liberalization of exchange control

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「為替の自由化」の意味・わかりやすい解説

為替の自由化
かわせのじゆうか
liberalization of exchange control

国際収支均衡と為替取引の規制,制約を解消して外国為替取引の自由化をはかること。第2次世界大戦後の日本の為替政策は,経済の実情を反映して,外国為替取引を原則禁止とし,個別に政令などにより禁止を解除するという委任立法制がとられた。その後,(1) 西ヨーロッパ諸国が 1958年末に通貨の交換性を回復するなど貿易・為替面での自由化を次第に推進しはじめたこと,(2) 64年には日本がIMF8条国に移行した結果,国際収支上の理由に基づく対外支払制限を原則として行わない義務を負うことになったこと,(3) 同年経済協力開発機構 OECDへの加盟に伴い,経常取引および資本移動の自由化を義務づけられることになったこと,(4) 日本産業の国際競争力の向上とこれに伴う外貨事情の好転など,日本経済を取巻く国際環境の変化から為替管理の緩和と為替取引の自由化が要請されることとなった。その結果外貨集中制度廃止され,これに伴い居住者外貨預金勘定および非居住者外貨預金勘定が認められるようになった。このような自由化の方向は,73年の石油危機による外貨事情の悪化から一度はかげりがさしたが,その後の日本の国際収支の急速な立直りからさらに積極的に推進されることとなり,76年には貿易外取引規制の緩和,外国為替公認銀行の中・長期的な現地金融緩和,77年には貿易外取引の簡素化のほか,外国為替公認銀行の外貨債務に対する準備率適用と円転換規制の一部緩和など,短期資金取引に対する為替管理の変更措置がとられた。さらに 79年 12月には外国為替及び外国貿易管理法 (外為法) が全面改正され,80年 12月1日から外国為替,外国貿易その他の対外取引は原則として自由となった。のち 98年4月には外為法が再び大幅に改正されて施行,内外資本取引の自由化,外国為替公認銀行制度の廃止による外国為替業務の自由化が実現した (→外国為替及び外国貿易法 ) 。

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