無体・無代・無台(読み)むたい

精選版 日本国語大辞典 「無体・無代・無台」の意味・読み・例文・類語

む‐たい【無体・無代・無台】

〘名〙 (古くは「むだい」とも)
① ないがしろにすること。無視すること。軽蔑すること。無にすること。むだにすること。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
② (形動) 無理なこと。無法なこと。また、そのさま。
平家(13C前)四「よもその物、無台にとらへからめられはせじ、入道に心ざしふかい物也」
③ (形動) とりわけはなはだしいさま。むやみ。また、副詞的に用いられて、少しも。全然。
塵袋(1264‐88頃)七「琴にはたまのことちに、あなを、あけて、絃をつらぬきたるとかや。無題にたふるることもなくて、よきにこそ」
④ (形動) 全くできないさま。
滑稽本・八笑人(1820‐49)初「むだッ口やへらず口は、わる達者だが、少しまじめな事は無体(ムテヘ)なもんだぜ」
⑤ (無体) 体をなさないこと。まとまった形になっていないこと。体系的でないこと。
至花道(1420)二曲三体の事「二曲三躰よりは入門せで、はしばしの物まねをのみたしなむ事、無躰(ムタイ)枝葉の稽古なるべし」
⑥ 仏語。実体がないこと。実在しないもの。無。
※清原宣賢式目抄(1534)一条「神は無方無体なれとも、人心に誠あれは、必す感応する所あり」
[補注]語源については「ないがしろ」に「無代」を当てて音読したという説と仏教語の「無体」に由来するという二説がある。後者は、法相宗で論理上許される法を「有体」、論理上許されない法を「無体」といい、ここから広く「道理の通らないこと」の意で「無体」が用いられ、その結果、「無理無体」といった表現も現われたとする。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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