無塩(読み)ぶえん

精選版 日本国語大辞典 「無塩」の意味・読み・例文・類語

ぶ‐えん【無塩】

[1] 〘名〙
① 塩けのないこと。塩を用いてないこと。
洒落本道中粋語録(1779‐80頃)「とんだ事、ぶゑんの干ものだの」 〔管子‐地数〕
② (保存するための塩を用いてないところから) 生(なま)であること。新鮮であること。特に、魚介類の新しいこと。また、そのもの。
平家(13C前)八「何もあたらしき物を無塩といふと心えて」
③ 転じて、うぶな人。純粋な人。
※評判記・もえくゐ(1677)「あまじほのにょうご、かうゐや、ぶゑんのきさきなどのやうに」
④ (「新序‐雑事」「列女伝‐弁通・斉鍾離春伝」などに見える、中国、戦国時代斉の宣王夫人で、その政治を助けた鍾離春が極めて醜く、無塩(二)の出で無塩女と呼ばれていたところから) 醜い女。醜女
※俳諧・青根が峯(1698)答許子問難弁「詞・器よしといふとも、趣向拙からば、無塩の面に西施が鼻を添たるがごとくならん」
[2] 中国の地名。現在の山東省東平県の東。春秋時代の小国で、漢代に県となった。

む‐えん【無塩】

〘名〙
塩分のないこと。ぶえん。
② (形動) 塩を引かないなま魚の類。転じて、新鮮なこと。また、うぶなさま。ぶえん。
歌舞伎桜姫東文章(1817)序幕「『何のお一つ云ひ分なき、お身となられて尼なぞとは』『左様々々。あったら無塩(ムエン)の蛤を、彼の雛段で腐らす同前』」
③ ⇒ぶえん(無塩)(一)④

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「無塩」の意味・読み・例文・類語

ぶ‐えん【無塩】

塩けのないこと。塩を用いないこと。
《塩を使っていないところから》なまであること。新鮮であること。また、そのもの。
「ここに―の平茸ひらたけあり」〈平家・八〉
人ずれのしていないこと。また、その人。うぶ。
「―のおむすの手いらずを」〈人・梅児誉美・初〉
《中国、戦国時代斉の宣王の夫人鍾離春が、山東省無塩の出身でたいへん醜かったところから》醜い女。無塩君。
「押し売りに―の后斉せいへ来る」〈柳多留・二〉

む‐えん【無塩】

塩分を含まないこと。塩けのないこと。

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