無徳(読み)むとく

精選版 日本国語大辞典 「無徳」の意味・読み・例文・類語

む‐とく【無徳】

〘名〙 (形動)
① 徳がないこと。品位がないこと。また、そのさま。〔漢書‐公孫弘伝〕
② 富裕でないこと。貧しいこと。財産地位がないこと。また、そのさま。
※宇津保(970‐999頃)蔵開下「かくむとくに侍れば、したがふ下人一人も侍らねば」
③ せっかくの物事が、何の効果も発揮せず、まったくむだになること。何のかいもなく、つまらぬ結果になってしまったさま。
(イ) 何のいいところもないさま。何ともさまにならないさま。
落窪(10C後)二「片輪を堀におしつめられて、物もいはである。なかなかむとくなるわざかなと、いらへしたる男どもをいふ」
(ロ) 何の見ばえもないさま。せっかくの美しさがだいなしであるさま。
※枕(10C終)二七八「御前の桜、露に色はまさらで、日などにあたりてしぼみ、わろくなるだにくちしきに、雨の夜降りたるつとめて、いみじくむとくなり」
(ハ) 何の効果もないさま。何の役にも立たないさま。
源氏(1001‐14頃)常夏「蝉の声などもいと苦しげにきこゆれば、水の上むとくなるけふのあつかはしさかな」

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デジタル大辞泉 「無徳」の意味・読み・例文・類語

む‐とく【無徳】

[名・形動]
徳のないこと。品位のないこと。また、そのさま。「無徳な(の)人」
地位や財産がないこと。貧しいこと。また、そのさま。
「かく―に侍れば、従ふ下人一人も侍らねば」〈宇津保・蔵開下〉
見ばえのしないさま。みすぼらしいさま。
「御前の桜、…雨の夜降りたるつとめて、いみじく―なり」〈・二七八〉
何の役にも立たないさま。
「水の上―なる今日の暑かはしさかな」〈・常夏〉

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普及版 字通 「無徳」の読み・字形・画数・意味

【無徳】むとく

不徳。

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