無記(読み)むき

精選版 日本国語大辞典 「無記」の意味・読み・例文・類語

む‐き【無記】

〘名〙 仏語
① 善とも悪とも記すことができないもの。事物の中性的な性質。有覆・無覆の二種に分ける。三性の一つ。無記性。また、哲学用語 Indifference の訳語としても用いる。
霊異記(810‐824)下「無記にして作せる罪は、無記にして怨を報ず」
※近代日本の思想文化(1953)〈唐木順三〉「解明すれば既に味気なき無記と化してしまふものを」 〔王維‐与胡居士皆病寄此詩兼示学人之二〕
質問に対して、是とも非とも答えないこと。形而上学的な問題に関し、積極的に判断・記述することができないものとして釈迦がとった態度

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デジタル大辞泉 「無記」の意味・読み・例文・類語

む‐き【無記】

仏語。
釈迦しゃかが、他の諸宗派からの形而上学的な質問に答えを与えなかったこと。
三性さんしょうの一。善でも悪でもない中性的な性質。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無記」の意味・わかりやすい解説

無記
むき
avyākṛta

仏教用語。事物の性質が善とも悪とも記すことができないことをいう。また,問いに対して,是とも非とも答えを出さないことをもいう。

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世界大百科事典(旧版)内の無記の言及

【仏教】より

…釈迦の方法は,一方で自然的欲望に身をまかせる快楽主義を否定し,他面,苦行を捨てる点で,苦楽の両極端を離れた中道と称される。 また,釈迦は人生問題の解決に直接役だたない形而上学的問題(たとえば世界の有限・無限とか,創造因とか)については質問されても解答せず(無記),判断を中止している。この点,釈迦は実務的で,自らの立場を病いに応じて薬を施す医者にたとえている。…

※「無記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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