熱可塑性エラストマー(読み)ねつかそせいえらすとまー(英語表記)thermoplastic elastomer

日本大百科全書(ニッポニカ) 「熱可塑性エラストマー」の意味・わかりやすい解説

熱可塑性エラストマー
ねつかそせいえらすとまー
thermoplastic elastomer

線状高分子でありながら加硫することなしにゴム弾性を示す高分子物質。ASTM(アメリカ材料試験協会)の規格による略称はTPE。熱可塑性ゴム、熱可塑性弾性体ということもできる。従来は無加硫ゴムとよばれた。柔軟で屈曲性の高い高分子鎖(ソフトセグメント:B)と、結晶化あるいは凝集しやすい剛直性の高分子鎖(ハードセグメント:A)が結合したブロックタイプと、両ブロックの混合したブレンドタイプがある。ブロックタイプはソフトセグメントの両端にハードセグメントが結合したABAトリブロック(テレブロック)共重合体と繰り返し結合した(AB)nマルチブロック共重合体がある。プラスチックと同様の熱可塑性と加工性があり、室温付近ではハードセグメントが凝集して物理的架橋をつくり、ソフトセグメントが通常のゴムに近い性質を示す。種類はスチレン‐ジエンブロック系、ジエン‐ジエンブロック系、熱可塑性ポリウレタン(TPU)系、ポリオレフィンブレンド系、ポリ塩化ビニルブレンド系、ポリエステルブロック系、ポリアミドブロック系などがある。TPEの特徴は、プラスチックの成形機で加工できることと、ほとんどの成形法が適用できることであり、欠点は、耐熱性や耐溶剤性が低く、永久ひずみが大きいことである。用途は、履物靴底ブーツ、各種部品、電線被覆、シーラント、ラップフィルム樹脂改良剤、アスファルト改質剤などがある。

[福田和吉]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「熱可塑性エラストマー」の意味・わかりやすい解説

熱可塑性エラストマー
ねつかそせいエラストマー
thermo-plastic elastomer

常温ではゴムの特性を示し,高温では可塑化されて成形加工の可能な高分子材料。ゴムと比較して,熱可塑性樹脂用の加工機械で成形することができ,リサイクルが可能,加硫工程が不要などの特徴がある。架橋点の役割を果たす硬質相とゴムの役割を果たす軟質相から成る。両相は互いに非相溶で,ミクロ相分離構造あるいは相互進入網目構造 (IPN) をとる。ウレタン系,エステル系などのブロック共重合タイプ,オレフィン系のゴムと樹脂をブレンドしたタイプのほか,塩化ビニル系,ポリブタジエン系,イオン結合を利用したアイオノマーなどがあり,電線,自動車部品,包装材など,幅広い用途に用いられている。

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