熱電発電(読み)ネツデンハツデン

デジタル大辞泉 「熱電発電」の意味・読み・例文・類語

ねつでん‐はつでん【熱電発電】

2種の異なる金属または半導体両端を接合し、2つの接合部に異なる温度を与えると起電力が生じるゼーベック効果を利用した発電。駆動部がないため騒音振動がなく、長寿命、小型軽量などの利点がある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「熱電発電」の意味・わかりやすい解説

熱電発電
ねつでんはつでん

ペルチエ効果、ゼーベック効果は、金属または半導体物質の電流による発熱吸熱特性を表す効果である。そのゼーベック効果を利用した発電方式をいう。2種の金属または半導体を接続し、二つの接続点に温度差を与えると両金属間または半導体間に熱起電力が発生し、この間に接続した負荷熱電流が流れる。この現象がゼーベック効果である。熱電発電の構造としてはのようにn形半導体とp形半導体とを並べ、これらを電極板で接続したものである。熱源から電気絶縁物を通してこの電極板を加熱すると接続部は高温となるが、その反対側は吸熱部でこの電極板は低温に保たれるので、両極板間に温度差を生じる。負荷を低温側電極間に接続すると半導体p‐n間に発生した起電力によって、pからnに向かって電流が流れる。熱電材料として金属は熱起電能(単位温度差当りの熱起電力)が小さいため、もっぱら半導体材料が用いられる。使用温度によって低温用と中・高温用の2種があり、実際の材料としてテルル化鉛テルル化ビスマスなどが使用されている。発電過程に動くものがないので長寿命であり、熱源があれば可能な小電力用途として、太陽の届かない深宇宙探査用人工衛星のための電源などに使われるが、単位重量当りの電気出力、効率、動作温度、燃料などの点からみて、高価な電源である。地上用では熱源として太陽光を用いるのが効果的であり、人工衛星用では熱源としてプルトニウムポロニウムなど同位元素の崩壊熱を用いるのが効果的である。熱電発電は、熱源として長寿命の同位元素を用いれば一定の出力を長期間得られる利点がある。例としては人工衛星用電源として、長径12センチメートル、長さ14センチメートル、重さ2.27キログラムの円筒状ポロニウム熱電発電器を高温382℃、低温79℃の間で動作させ約50ワットが得られている。ペルチエ効果はゼーベック効果とは逆で、電流を流すと発熱と吸熱が起こる現象である。パーソナルコンピュータCPU(中央処理装置)部品を冷却するためにテルル化ビスマスのペルチエ効果冷却素子が利用されている。CPU用ペルチエ素子が普及した関係でコストが低減し、逆にこれをゼーベック効果素子として、排熱などを利用した小さい熱電発電が普及する可能性がある。

道上 勉・嶋田隆一]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「熱電発電」の意味・わかりやすい解説

熱電発電【ねつでんはつでん】

熱電気発電とも。ゼーベック効果による熱起電力を利用した発電方式。異種の金属または半導体を両端で接合し,両接合点間に温度差を与えて起電力を得る。熱電半導体素子を組み合わせ実用化されている。無人灯台,無人中継所など遠隔地の電源,人工衛星用などの用途があり,原子炉熱源,シリコンゲルマニウム素子を用いて500Wを発電する人工衛星用SNAP10Aはボエジャー1号,2号の電源として有名。
→関連項目直接発電発電

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「熱電発電」の意味・わかりやすい解説

熱電発電
ねつでんはつでん
thermic generation

温度差発電ともいう。2種の異なった金属線を2点で接合して閉回路をつくり,その両接合部間に温度差を与えると,ゼーベック効果によって熱起電力が発生する。この熱起電力を電力源として利用するのが熱電発電である。半導体の研究が進み,熱-電気変換効率の高い熱電材料が開発され,山間僻地の無線中継所,海上のブイなどの小電力特殊電源として利用されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の熱電発電の言及

【直接発電】より

… 直接発電の他の方式として,各種の物質の熱・電気ないし熱・磁気効果を用いるものがあり,その特徴としては小型軽量性があげられる。例えば熱電効果を用いる熱電発電は放射性物質を熱源とし人工衛星用電源として用いられる。このほか,原理的には,誘電体の誘電率とか磁性体の透磁率の温度依存性を利用する熱誘電発電,あるいは熱磁気発電も考え得るが,実用化研究は目下のところ行われていない。…

※「熱電発電」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android