爪肥厚(読み)そうひこう

知恵蔵 「爪肥厚」の解説

爪肥厚

爪が分厚くなった状態のこと。長期間にわたって爪に何らかの物理的圧迫が加わったり、白癬(はくせん)という水虫一種に感染することで起こることが多く、手の爪よりも足の爪でしばしば見られる。
原因となる物理的圧迫としては、足の形に合っていない靴が挙げられる。特に先端が細くなったハイヒールは足の指先に体重がかかりやすく、足先に持続的に圧力がかかることになるため注意が必要。白癬は、免疫力が低下している高齢者や糖尿病患者などが特に感染しやすい。
爪肥厚があると、爪が割れやすくなったり、剥(は)がれやすくなったりする。そのため、割れた爪が衣服布団にひっかかり、剥がれた部分から雑菌が入って化膿などのトラブルを起こすことがある。そこで、原因となる物理的圧迫を取り除いたり白癬を治療し、分厚くなった爪を削って薄く整えるといった適切なケアをする必要がある。
2007年7月に、認知症を持つ高齢患者数人の爪肥厚をケアした際に出血があったことをもって看護師逮捕された「爪切り傷害事件」は、看護師による行為が看護ケアの範囲内にあるものなのか、あるいは虐待にあたるのかが争点となった。逮捕の3カ月後に看護師の全国的な職能団体である日本看護協会は、独自の調査に基づき、当該看護師の行為を「看護実践から得た経験知に基づく看護ケア」であったと発表。看護および介護現場におけるフットケアの重要性が広く世間に認知されるきっかけとなった。一審では懲役6カ月、執行猶予3年の有罪判決が出たが、10年9月に二審の福岡高等裁判所にて無罪判決。福岡高等検察庁が「適切な上告理由を見いだすことが困難であると判断」し、上告を断念したことにより、同年10月1日、当該看護師の無罪が確定した。

(石川れい子  ライター / 2010年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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