爬虫類(読み)はちゅうるい(英語表記)reptile

翻訳|reptile

精選版 日本国語大辞典 「爬虫類」の意味・読み・例文・類語

はちゅう‐るい【爬虫類】

〘名〙 脊椎動物門、羊膜亜門の一綱。カメ、トカゲ、ヘビ、ワニなどを含む。皮膚に表皮性の角鱗があり、皮腺は少なく乾いている。骨格は両生類より化骨し、大部分陸生で肺呼吸を行なう。心臓は二心房一心室であるが心室には不完全ながら中隔がある。ヘビおよびトカゲ類の一部に無肢のものがある。外温動物で卵生または胎生。化石時代には大形の爬虫類(恐龍など)が繁栄していた時代があった。爬虫綱。爬虫動物。〔動物小学(1881)〕

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デジタル大辞泉 「爬虫類」の意味・読み・例文・類語

はちゅう‐るい【×爬虫類】

爬虫綱に分類される脊椎動物の総称。カメトカゲヘビワニなど。変温動物で、体は表皮の角質化したうろこで覆われ、四肢は短小または退化して消失。大部分が陸生で、肺呼吸を行う。卵生、一部は卵胎生古生代ペルム紀両生類から進化し、中生代に繁栄して恐竜など大形種も生じていた。
[類語]脊椎動物無顎類魚類両生類鳥類哺乳類

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改訂新版 世界大百科事典 「爬虫類」の意味・わかりやすい解説

爬虫類 (はちゅうるい)
reptile

脊椎動物門爬虫綱Reptiliaに含まれる,角質の体鱗に覆われた変温動物の総称。古生代末期に両生類から分化し,陸上に進出して中生代に大きな発展を遂げ,恐竜時代または爬虫類時代と呼ばれる繁栄を築きあげた。しかし中生代末には急速に衰退した。その原因はわかっていない。現生の爬虫類は,カメ類,ムカシトカゲ類,トカゲ類,ヘビ類およびワニ類の総計約6200種が知られ,熱帯・亜熱帯地方を中心に,南極を除く世界の各大陸および諸島に分布し,一部は北極圏に達している。

体表はうろこまたは角質の皮膚に覆われて羽毛や毛を生ぜず,分泌腺が乏しくて乾いている。うろこは表皮の表層が厚くなって角質化したもので,さらに真皮中に生じた骨質の皮骨で,全身または一部が覆われるものも少なくない。成長に伴って脱皮し,ヘビでは全身の角質表皮が一度に,トカゲでは部分的に切片となって脱落し,カメワニでは表皮の消耗として徐々に行われる。カメレオンをはじめ樹上生トカゲ類には,真皮内の色素胞,とくに黒色素胞の収縮拡張によって体色変化するものが多い。

 骨格は両生類に比べより硬骨化して,高等脊椎動物としての特徴を備え,頭骨は1個の後頭顆(こうとうか)で,頸椎と関節するため,頭部はかなり自由に動かせる。頭骨の構造は後述するように分類上重要な要素で,とくに頭蓋後方に開口する側頭窓(そくとうそう)(側頭窩(そくとうか))temporal fenestraの数や位置が問題にされる。頭骨はカメやワニではがんじょうな箱型で,方骨(ほうこつ)が頭蓋に固着するため,大きく口を開くことができない。ムカシトカゲ,トカゲ,ヘビでは頭骨は多数の薄い層から成り,一部が緩く関節しており,とくにメクラヘビ類を除くヘビの下あごは,上側頭骨,方骨を介して頭蓋に緩く関節するため,大きく口を開けることができる。またトカゲでは左右の下顎骨(かがくこつ)が前端の縫合部で結合し固着するが,ヘビでは靱帯組織で結合し,下顎骨を左右別々に下げることができる。カメ以外では原則として上下両あごに歯を備え,有鱗目では多くが側生であるが,一部には頂生および槽生に近いものがあり,ワニでは槽生となっている。

 脊柱は多数の脊椎骨の集合によって形成され,多いものはヘビの200~400個ほど。頸椎を除き各脊椎骨には1対の肋骨があって,ヘビ,カメ以外では胸骨に接合して胸郭を形成し,ムカシトカゲ,ワニでは腹部に軟骨性の腹肋骨を備える。原則として四肢が発達し,それぞれ肩帯と腰帯によって支えられるが,ヘビとトカゲの一部では四肢が退化し,ヘビでは肩帯が完全に消失し,腰帯と後肢の痕跡が少数の科に見られるにすぎない。指は前後肢ともに5本であるが,ワニの後肢は4本で,あしゆびの間には水かきが発達する。また一部のトカゲでは1~3本の少数またはひれ状となり,ウミガメ・スッポン類では四肢がひれ状となってあしゆびが明りょうでない。

 カメ以外では移動は原則としてはって行い,体を左右に波動させて前進する。四肢を欠くヘビでは完全な蛇行運動を行うが,トカゲ類でとくに四肢の発達したものは体を持ち上げて走り,後肢だけでとび跳ねるように走るものもある。またヤモリ類やアノールではあしゆびの腹面が吸盤状の指下板となっている。

爬虫類は一般に視覚,聴覚および嗅覚が発達するが,ヘビでは聴覚が劣り鼓膜も欠き,目が側頭部にあるため,樹上生の一部を除き立体視ができない。またメクラヘビ類や地中生のトカゲ類では目が退化し,まったく視力を失っている。瞳孔は昼行性では円形,夜行性では縦長で明るい場所では細く絞るが,例外もある。頭頂眼は多くのトカゲでは頭頂間板にわずかに痕跡が認められるが,ムカシトカゲでは感光器官としての構造が残されている。

 口腔と気管とは多少とも明りょうに区分され,肺が発達して両生類よりも内面積を増加しており,体が細長いヘビとアシナシトカゲ類では左肺が退化,ミミズトカゲ類では右肺が退化している。終生肺で呼吸し,えらを生じる期間がなく,水生のカメ類のみ口腔や総排出腔内で皮膚呼吸を行う。ワニにのみ胸腔と腹腔とを区分する隔膜がある。両生類と同様に,体温が周囲の温度によって変化する変温(冷血)動物で,体温調節は場所の移動によって行われ,冬季が寒冷な地域では冬眠を行う。心臓は2心房1心室で,左右の大動脈弓があり,ワニのみ2心室で,心室はパニッツァ小孔で通じている。

 雄には陰茎があって体内受精を行うが,ムカシトカゲは交接器を欠き,総排出腔の接触によって受精する。ほとんどが卵生で,ヘビの約1/4と少数のトカゲが卵胎生。卵は乾燥に耐える卵殻に包まれ,多量の卵黄を含み,胚は鳥類,哺乳類と同様に羊膜に包まれる。孵化(ふか)した子は親と同じ形態で,変態することがない。子の吻(ふん)部には卵歯を生じ,内側より卵殻を切り開いて孵化するが,ワニでは子の孵化を助け,しばらく育児するものがある。ヘビやトカゲの一部では産卵後,親が抱卵して卵塊を守るが,他は放置し自然孵化する。なお,化石上で親と卵の関係がはっきりしているのはプロトケラトプスだけである。

 腎臓は後腎で,尿は尿酸として排出され,尿道は消化管とともに総排出腔で外部に開く。寿命はほとんどが10~20年ほどで,長寿はワニの約50年,ムカシトカゲの約100年,カメの約100~180年である。爬虫類の生活環境はきわめて変化に富み,平地から4000mの高地に至る森林,草原,耕地,荒地,湿地,湖沼,河川,砂漠,地中のいたるところに適応放散し,ウミガメ,ウミヘビなどは海洋に進出している。またヤモリなどの一部のトカゲやヘビは居住区域にもすみついている。

 生態に応じて形態や行動は変異に富み,とくに自衛手段にはヘビやトカゲに特有のものが多く見られる。餌はほとんどが動物質で,カメ,トカゲの一部が植物質または雑食。生態系ピラミッドの中では重要な役割を果たし,天敵は肉食性哺乳類や鳥類および他種の爬虫類。

毒ヘビのうち毒性の強いものと,ドクトカゲおよび少数の大型ワニが人にも危険である。その他は一般に性質が温和で無害。一部が皮革細工の材料として重用されるほか,食用や民間薬用に供され,カメ類をはじめペットにされるものも少なくない。
執筆者:

爬虫類の最初の祖先型は二畳紀に出現した杯竜類で,両生類と爬虫類との両方の特徴をもつヒロノムス類を起源とするものと考えられている。乾燥に強い皮膚をもち,卵殻に包まれた有羊膜卵を産むことで陸上に進出した爬虫類は,中生代に大発展を遂げ,大型恐竜類を含め多くの群が分化し,陸,海,空のいたるところに生活圏を拡張した。中生代末期に急速に衰退してからも,4目約6200種が現在なお繁栄を続けている。

 爬虫類の分類は絶滅種が多く,大分類で異なる意見がある。当然,系統関係についても考え方が違う。ふつう,頭蓋の眼窩より後の部分に側頭窓が開き,その位置を大分類の基本としている。(1)最も原始的な爬虫類には側頭窓がなく,無弓亜綱Anapsidaと呼ばれ,杯竜目,カメ目,中竜目が属する。ニューメキシコ州の二畳紀前期の地層から産出したリムノスケリスLimnoscelisは全長約1.5mで四肢が発達し,原始的爬虫類の典型とされる。(2)外側頭窓が一つで,その上縁に後眼窩骨と鱗状骨が並ぶ単弓亜綱Synapsidaは哺乳類型爬虫類の一群で,哺乳類に続くものと考えられている。(3)上側頭窓が一つあり,その下縁に後眼窩骨と鱗状骨が並ぶ広弓亜綱Euryapsidaは海生爬虫類が主で,鰭竜(きりゆう)目,板歯目,魚竜目などが属する。(4)側頭窓が2個で,後眼窩骨と鱗状骨がそれらを分ける双弓亜綱Diapsidaの多くは支配的爬虫類ruling reptilesと呼ばれ,中生代の爬虫類の中で最も栄えた。恐竜,翼竜および有鱗類(トカゲ,ヘビなど)などが属する。生活圏も陸,海,空すべてに広げられた。双弓亜綱は鱗竜類Lepidosauriaと主竜類Archosauriaの2グループに分けることもある(現生種の分類では,両者をそれぞれ有鱗亜綱,鰐形(がくけい)亜綱としている)。
執筆者:

次の3群に分けられる。

(1)無弓亜綱 現生種はカメ類だけで,甲をもつカメの祖先型はすでに三畳紀に出現していた。カメの体は,皮骨である骨板と脊椎骨,肋骨,鎖骨が結合した箱型の堅固な甲に囲まれており,構造は祖先型からほとんど変化していない。甲の表面は角質の甲板に覆われるが,水生のスッポン類,スッポンモドキ,海洋生のオサガメ(成体)では二次的に消失し,またオサガメの甲は小さな骨片の集合からなる。

 頸椎は8個,脊椎骨は10個でふつう第2~第8番目までが背甲骨板と癒合する。上下顎とも歯を欠くが,祖先型では口蓋に歯が残っていた。肛門裂は体軸に平行で,陰茎は単一。すべて卵生で,水生,海洋生も陸で産卵する。カメ目Testudinesの現生種は12科約230種で,頸部を甲内に引っ込めるときの曲げ方の相違により,潜頸亜目Cryptodiraと曲頸亜目Pleurodiraに大別される。大半は水陸両生で,一部が陸生および海洋生。

(2)有鱗亜綱Lepidosauria 体表は角質化した細鱗で覆われる。三畳紀初期に喙頭(かいとう)類と有鱗類とが分化し,喙頭目Rhynchocephaliaではムカシトカゲ科のムカシトカゲ1種のみがニュージーランドに生存している。ムカシトカゲは2個の側頭窓をもち,退化的ながら頭頂眼が存在し,上あご前端は下方を向いて,くちばし状突起がある。有鱗目Squamataで現存するものはトカゲ亜目Sauria約3800種と,ヘビ亜目Ophidia約2400種で,側頭窓は下方で不完全となり,上側頭窓1個しかない。肛門裂は体軸に直角で,陰茎は左右に二分する。

 トカゲ類の現生種は5群23科に分類され,第1群にはイグアナアガマ,カメレオン,第2群にはヤモリヒレアシトカゲ,第3群にはスキンク,ヨロイトカゲ,テュウトカゲ,カナヘビなどが含まれる。第4群は舌が先端で二分する一群で,四肢が退化したアシナシトカゲ類や大型のオオトカゲドクトカゲなどが含まれる。第5群はミミズ型をした地中生のミミズトカゲ類で,体鱗が環状に並び,体を上下にくねらせて地中を前進する。

 ヘビ類は,おそらく現生のオオトカゲ類を含むトカゲ類のプラチノータ群から,ジュラ紀に分化したものと考えられている。ヘビの現生種は主として頭骨,脊椎骨の構造により,3群14科に分類され,第1群には腹板が分化しないミミズ型で地中生活を送るメクラヘビ類2科が含まれる。第2群には頭骨の構造が原始的な半地中生の円筒形をしたパイプヘビなどの3科と,大型のボア科および水生のヤスリヘビ科が含まれる。第3群は典型的な無毒ヘビのすべてが属するナミヘビ科と,毒ヘビのコブラ科およびクサリヘビ科が含まれ,ナミヘビ科の一部は後牙類の毒ヘビとなっている。ウミヘビ類は2系統の陸生コブラ類から分化し海洋生となった一群で,コブラ科に含まれる。

(3)鰐形亜綱Archosauria 現存はワニ類のみで,肛門裂は体軸に平行で,陰茎は単一。祖先型は三畳紀後半に槽歯類から分化した一群と考えられ,現生種は2科22種に分類される。アリゲーター科では口を閉じると,下あご第4歯が上あごの溝にはまり他の下顎歯は上顎歯の内側にかみ合わされて外から見えず,また第4上顎歯が最大だが例外もある。同科にはアリゲーター類とカイマン類が含まれる。クロコダイル科では口を閉じても,上下両あごの歯がかみ合わされて外から見え,第5上顎歯が最大。腹部の鱗板には小孔がある。大型のクロコダイル類や吻部の細長いガビアル類が含まれる。
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「爬虫類」の意味・わかりやすい解説

爬虫類
はちゅうるい
reptile

脊椎(せきつい)動物門爬虫綱に属する、角質の体鱗(たいりん)に覆われた変温動物の総称。この仲間Reptiliaは次のような歴史を有する。

[松井孝爾]

系統と進化

爬虫類は古生代末期に両生類から分化し、乾燥に強い皮膚と発達した四肢を備え、卵殻をもつ有羊膜卵(発生過程で羊膜を生ずる卵)を陸に産むことで、陸上に進出した。やがて、中生代には大発展を遂げて、爬虫類時代とよばれる繁栄を築きあげた。爬虫類の最初の祖先型は、ペルム紀(二畳紀)に出現したリムノスケリスLimnoscelisなどの杯竜類(はいりゅうるい)で、すでに爬虫類型の骨格を完成しており、その起源は、両生類と爬虫類の両方の特徴をもつシームリアSeymouria類と考えられている。ジュラ紀から白亜紀にかけて、大形恐竜類を含む多数の群に分化し、陸ばかりでなく海、空にまで生活圏を拡張していった。しかし中生代末期には不明の原因で急に衰微し、かわって爬虫類から分岐した哺乳(ほにゅう)類、鳥類が台頭するようになった。爬虫類の現生種はカメ、ムカシトカゲ、トカゲ、ヘビ、ワニの総計約6000種で、南極を除く世界の各地に分布する。

[松井孝爾]

形態的特徴

体表は鱗(うろこ)または角質の皮膚に覆われ、分泌腺(せん)が乏しくて乾燥している。体鱗は表皮の表層が角質化したもので、さらに骨質の皮骨を含むものも少なくない。カメレオンをはじめ樹上性のトカゲ類には、真皮内の色素胞の収縮・拡張による体色変化を利用した、効果的な保護色をもつものが多い。脱皮は、成長に伴って表皮の角質部が脱落するもので、ヘビでは全身が一度に、トカゲでは部分的に、カメやワニでは徐々に行われる。骨格は両生類よりもさらに硬骨化し、頭骨はただ1個に減った後頭顆(こうとうか)(後頭部にあるくぼみ)で頸椎(けいつい)と関節するため、頭部はかなり自由に動く。頭骨の構造、とくに側頭窓(目の後方にある開口部)の数や位置は分類上重要な要素であり、全体が6ないし7群(亜綱)に分類される。そのうち現生種が含まれるのは次の3群のみで、他はすべて絶滅した化石種である。

[松井孝爾]

現生種

(1)無弓亜綱Anapsida もっとも原始的な一群で杯竜類も含まれる。頭骨は堅固な少数の骨で構成され、側頭窓がなく側頭部は完全に覆われている。現生種はカメ目だけで、甲を備えた祖先型はすでに三畳紀に出現していた。甲は、皮骨である骨板と脊椎骨、肋骨(ろっこつ)、鎖骨が結合した堅固な箱形で、表面は角質の甲板(こうばん)(鱗板)で覆われるが、一部では二次的に甲や甲板が退化している。上下のあごとも歯を欠くが、祖先型では口蓋(こうがい)に歯を残していた。肛門裂(こうもんれつ)は体軸に平行である。すべて卵生で、水生・海生種も陸で産卵する。11科約220種が知られ、頭頸部の引っ込め方で、潜頸亜目と曲頸亜目に大別される。

(2)有鱗亜綱Lepidosauria 原則として上下2個の側頭窓があり、体表は角質化した細鱗で覆われる。肛門裂は体軸に直角である。三畳紀初期に分化して栄えた喙頭目(かいとうもく)は、現在ムカシトカゲ科の1種がニュージーランドに生存するだけである。有鱗目で現存するのは、トカゲ亜目の約23科3400種とヘビ亜目の約11科2500種で、側頭窓は下方で不完全となって1個しかなく、下あごは方骨を介して頭蓋に緩く関節するため、口を大きく開くことができる。

(3)鰐形亜綱(がくけいあこう)Archosauria 上下2個の側頭窓をもち、肛門裂は体軸に平行である。代表的な大形恐竜を含み、現生種は槽歯目から分化したワニ目の2科23種である。歯並びや鱗板の違いで、アリゲーター科とクロコダイル科に分類される。全長3~7メートルの大形種が多く、爬虫類ではもっとも強力な存在である。

 爬虫類は、毒ヘビと少数の大形ワニが人畜に被害を与えるが、反面、多くの種が農林業の害獣であるネズミ類や小哺乳類をとらえて、役だっている。一部が食用、細工物の材料、ペット、民間薬用に供せられる。

[松井孝爾]

『『小学館の学習百科図鑑36 両生・はちゅう類』(1982・小学館)』『『学研の図鑑 爬虫・両生類』(1973・学習研究社)』『中村健児・上野俊一著『原色日本両生爬虫類図鑑』(1963・保育社)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「爬虫類」の意味・わかりやすい解説

爬虫類
はちゅうるい
Reptilia; reptile

脊椎動物門爬虫綱に属する動物の総称。石炭紀に現れ,中生代に繁栄した動物群で,進化の系統では両生類鳥類哺乳類の中間に位置する。皮膚を保護する鱗をもち,陸上に卵を産むことで,地上のほとんどの場所で活動できるようになり,形態は多様化した。現生種はカメ目 Chelonia,ムカシトカゲ目 Rhynchocephalia,トカゲ目 Squamata,ワニ目 Crocodiliaに分けられるが,恐竜類や翼竜類などのようなすでに絶滅したものも多数含まれる。
体は一般に角質の鱗でおおわれ,ほとんどがない。体の大きさは,体長約 35mmのヤモリの仲間から 9mに達するアナコンダまで実にさまざまである。現生のカメで最大のオサガメは,体重が 600kgをこえる。ヘビ類と一部のトカゲを除いた爬虫類は四肢をもつが,体側から側方に突き出てから下方に曲っているため,前進するとき左右にも体が揺れてしまい運動の効率は良くない。しかしワニ類トカゲ類は体を持上げて走ることができ,そのスピードは意外に速い。陸性で脚をもたない種類は,体の下面で地面や岩などの固い場所を後方へ押しやって移動する。樹上性のニシキヘビやカメレオンは,尾を枝に巻きつけて体を保持し,移動する。また,ヤモリが壁をよじ登れるのは,小さな鉤の沢山ついた指の裏で,壁面のわずかな突起を捕えているからである。爬虫類のなかには水中で生活するものもいるが,そのほとんどが尾を使って泳ぐ。
心臓は2心房2心室をもつが,心室間の隔離は原則として不十分である。肺呼吸をし,体温は変温性である (→変温動物 ) 。ムカシトカゲ以外の雄は交接器をもち,体内受精を行うが,トカゲ類とヘビ類のなかには単為生殖を行うものも知られている。一般に殻に包まれた比較的大型の卵を産む。まれにマムシのように胎生の種もある。卵の数はカメの仲間で一度に最高 200個も産むものもいるが,ヤモリで通常2個,ワニで 20~70個程度である。卵は発生中に羊膜と尿膜ができるのが特徴で,羊膜は卵を乾燥から守り,尿膜は呼吸器官として機能する。爬虫類,鳥類,哺乳類だけに羊膜ができるので,これらを総称して羊膜類ともいう。排泄器は後腎。世界で 6000種余が知られており,温帯から熱帯にかけて広く分布する。しかし食用あるいは皮革製品用に狩猟され,これまでに多くの種が絶滅した。ごく一部の限られた地域を除いて,人間に危害を加える有毒な種はほとんどない。

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百科事典マイペディア 「爬虫類」の意味・わかりやすい解説

爬虫類【はちゅうるい】

変温動物のうちでは最も進んだ体制をもつ脊椎動物の一綱。体表は原則として角質の鱗におおわれ,半数以上の種類が発達した四肢をもつが,四肢が退化したものもある。心室は不完全ながら隔壁で区分され,終生肺で呼吸して,鰓呼吸の時期をもたない。生体内窒素を尿酸の形で排出し,陸上での産卵が可能。卵は卵殻に包まれ,成体形へ直接発生して,幼生期も変態することはない。古生代末に両生類から分かれ,中生代に著しく繁栄(恐竜)したが中生代末期にはほとんどが滅び,現在では4目約6000種を数えるにすぎない。しかし鳥類,哺乳(ほにゅう)類を生む母体となって,生物進化の過程で重要な位置を占めた。喙頭(かいとう)目(ムカシトカゲ),カメ目,ワニ目は形態的にはほとんど中生代のものと変わりないが,ヘビトカゲ類を含む有鱗(ゆうりん)目は,白亜紀の水生トカゲの一群から分かれ,新生代に著しい分化を遂げた。

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世界大百科事典(旧版)内の爬虫類の言及

【脊椎動物】より

…海,淡水,陸のほとんどあらゆる環境に生息し,体の大型なものが多い。爬虫類時代(中生代)や哺乳類時代(新生代)の名で知られるように動物界でもっとも顕著な類を含み,重要な家畜,実験動物のほとんどがこの類に属する。現生種は約4万4000あり,無顎(むがく)綱(ヤツメウナギなど),軟骨魚綱(サメ,エイなど),硬骨魚綱(ニシン,コイ,スズキなど),両生綱(イモリ,カエルなど),爬虫綱(カメ,トカゲ,ヘビ,ワニなど),鳥綱,哺乳綱が含まれる。…

【聴覚】より

…コイやナマズのようなコイ類(骨鰾(こつひよう)類)では中耳の代りにウェーバー器官があり,音はうきぶくろからウェーバー小骨連鎖を経て内耳に伝わる。両生類や爬虫類には中耳がみられるが,外耳はなく,鼓膜が露出している。外耳は哺乳類で発達するが,鳥類にも一部みられる。…

※「爬虫類」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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