デジタル大辞泉
「父」の意味・読み・例文・類語
とと【▽父】
1 子が自分の父を敬い親しんで呼ぶ語。⇔母。
2 夫をさしていう語。
「―がためかかに若菜をそろへさせ」〈浮・織留・六〉
ち【▽父】
上代、男子を敬っていった語。「おほぢ(祖父)」のように他の語の下に付く場合は連濁のため「ぢ」となることがある。
「甘らに聞こし以ち食せ、まろが―」〈記・中・歌謡〉
しし【▽父】
《上代東国方言》父。
「月日やは過ぐは行けども母―が玉の姿は忘れせなふも」〈万・四三七八〉
かぞ【▽父】
《古くは「かそ」》上代、父をさす語。⇔いろは。
「その―母の二はしらの神」〈神代紀・上〉
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ちち【父】
〘名〙
① 両親のうちの男の方。すなわち、実父・継父・養父の総称。父親。おとこおや。ち。かぞ。てて。しし。
※
万葉(8C後)一三・三三一二「奥床に 母はい寝たり 外床に 父はい寝たり」
※源氏(1001‐14頃)末摘花「ちちの大輔の君はほかにぞすみける。ここには時時ぞかよひける」
② キリスト教で、神をいう。
※悪魔(1903)〈
国木田独歩〉三「天に在
(まし)ます父
(チチ)よ」
③ 新しいものの開祖。先駆者。また、偉大な貢献者。「現代物理学の父」
※春興倫敦子(1935)〈
福原麟太郎〉倫敦消息「
スペンサーこそは英詩の又英文学の父であり、又母である」
[語誌](1)もとは「ち」に父の意があったことが「まろが知
(チ)」〔
古事記‐中・歌謡〕などから分かる。「ち」は、また「おほぢ」(祖父)、「をぢ」(伯父、叔父)などの語基でもある。
(2)中古以後に「てて」の形も認められるが、徐々に俗語的になっていったことが「てて 父の俗語也」〔倭訓栞〕などからうかがわれる。
(3)「
日葡辞書」には「
Toto(トト)」がみられ、この語にさまざまな接辞のついた語形が近世になって現われる。
上方語では「ととさん」「ととさま」、
江戸語では「おとっちゃん」「おとっつぁん」「おととさん」「
とうさん」「
おとうさん」などである。
(4)「ちゃん」は「おとっちゃん」の上略語とされるが、全国に広がる方言分布からすると、それほど新しい語とは思えず、「ちち」に由来する
可能性もある。
とと【父】
〘名〙
① 父をいう
幼児語。子が父親を敬い親しんで呼ぶ語。おとなが子の立場に立って使う場合もある。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上「かの息子にっこと笑ひ『なふとと、百はたごとはこの事か』といふ」
② 転じて、夫。亭主。
てて【父】
〘名〙
① 父。ちちおや。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「この手、母にも勝り、母はてての手にも勝りて」
②
遊女屋の
主人。〔随筆・異本洞房語園(1720)〕
※
御伽草子・
月日の
本地(室町時代物語集所収)(室町末)「よくよく、しゅごし申せとて、御ててにぞめされける」
ち【父】
〘名〙 男子を敬っていう
上代語。ちち。かぞ。他の語の下に付いて用いられる場合は、連濁によって「ぢ」となることもある。
※古事記(712)中・歌謡「横臼
(よくす)に 醸
(か)みし
大御酒(おほみき) 甘
(うま)らに 聞こし以
(も)ち食
(を)せ まろが知
(チ)」
かぞ【父】
〘名〙 (古くは「かそ」) 父をさす上代語。⇔
いろは。
※
書紀(720)仁賢六年是秋「菱城邑人鹿父〈鹿父は人の名なり。俗、父を呼びて柯曾と為〉」
[補注]「日本書紀」とその関連の文献に現われる。語源や「ちち」との相違は不明。「父母」を表わすときは「かぞいろ」または「かぞいろは」の形になる。
しし【父】
〘名〙 「ちち(父)」の上代東国方言。
※万葉(8C後)二〇・四三七六「旅ゆきに行くと知らずて母(あも)志志(シシ)に言申さずて今ぞ悔しけ」
てて‐ら【父】
※浄瑠璃・雪女五枚羽子板(1708)厄払ひ「ててらかからに爺婆息災」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
父
ちち
Fadren
スウェーデンの劇作家 A.ストリンドベリの戯曲。3幕。 1887年初演。男性と女性の間の永遠の相克,理性と感情の対立を,夫婦の葛藤を通して描いた自然主義リアリズムの代表作。全ヨーロッパに大きな反響を呼起した。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
父
1988年公開の日本映画。監督・脚本:木下恵介。出演:板東英二、太地喜和子、野々村真、斉藤ゆう子、森口瑤子、チャールズ・ボイド、玉井碧ほか。木下恵介の遺作。
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世界大百科事典(旧版)内の父の言及
【親子】より
…父母と子の関係を指すが,生みの親と子の血縁的な関係だけではなく,養親と養子,親分と子分,親方と子方の関係のように,法制上,習俗上親子関係が擬制される関係([擬制的親族関係])を指しても用いられる。
[親子と血縁]
親子関係では,とくに血のつながりという自然的要素が強調されるが,いずれの社会でも,血のつながりがあればただちに社会的にも親子関係が発生するとされているわけではない。…
【家父長制】より
…家父長制は次の三つに分類できる。(1)家族類型としての家父長制 家族におけるいっさいの秩序が,最年長の男性がもつ専制的権力によって保持されている場合,こうした家族は〈家父長制家族patriarchal family〉とよばれる。…
※「父」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」