特定物債権(読み)とくていぶつさいけん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「特定物債権」の意味・わかりやすい解説

特定物債権
とくていぶつさいけん

特定物の引渡しを目的とする債権である。特定物の引渡しとは、具体的に確定している物の占有を移転することをいい、所有権とともにこれを移転する場合をも含む。贈与売買交換などの契約において、多く生ずるところの債権である。特定物債権の債務者は、引渡しをするまでは善良な管理者の注意をもって、その物を保管しなければならないが(民法400条)、引渡しに際しては、債務者は、そのときの現状で引き渡せばよいものとされている(同法483条)。たとえば、債権発生のときから引渡しまでの間に物が壊れたとしても、壊れたままの状態で引き渡せばよく、修繕する義務はないが、実際は損害賠償責任を負う場合もある。なお、履行場所については、別段の意思表示のない場合は、債権発生当時にその物の存在した所である(同法484条)。

[竹内俊雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の特定物債権の言及

【金銭債権】より

…もっとも,金銭の給付には,封金の寄託や特定貨幣の引渡しという意味も含まれる。しかし,これは特定物債権であって,金銭債権ではない。金銭債務の履行つまり金銭の支払いにあたっては,債務者は,自分の選択によって,どの通貨を給付してもよい(民法401条1項)。…

【種類債権】より

…他の物と区別さるべき一定の性質を有する物(種類物)の一定数量の給付を目的とする債権。種類債権は不特定物債権ともいわれ,特定物債権と対置される。ビール1ダースとか米10kgの給付を求める債権が前者であり,所在を示した土地や建物の引渡しを請求しうる債権が後者である。…

※「特定物債権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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