狂言本(読み)キョウゲンボン

デジタル大辞泉 「狂言本」の意味・読み・例文・類語

きょうげん‐ぼん〔キヤウゲン‐〕【狂言本】

歌舞伎狂言の筋をまとめた版本。元禄年間(1688~1704)に流行した。多く挿絵が入っているので絵入り狂言本ともいう。

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精選版 日本国語大辞典 「狂言本」の意味・読み・例文・類語

きょうげん‐ぼん キャウゲン‥【狂言本】

〘名〙
歌舞伎狂言の内容を草子風にまとめた絵入細字本。せりふ集録には努めているが、筋書風にまとめてあり、脚本そのものではない。十丁前後の半紙本元祿一六八八‐一七〇四)から享保一七一六‐三六)にかけて歌舞伎上演の際出版された。役者の舞台姿を絵に入れてあるところから、絵入狂言本ともいう。
② 歌舞伎狂言の台帳台本
役者論語(1776)続耳塵集「狂言本とてくわしく書事は、金子一高よりはじまりける也」
③ 歌舞伎に関する書物総称。江戸中期以後、いうようになった。
黄表紙・御存商売物(1782)中「もしへ、子どものきゃうげんぼんをおよびなんし」

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改訂新版 世界大百科事典 「狂言本」の意味・わかりやすい解説

狂言本 (きょうげんぼん)

歌舞伎狂言の梗概を物語風に記した書籍の総称。挿絵入りであるところから〈絵入(えいり)狂言本〉ともいう。狂言本は,歌舞伎の最初の充実期ともいうべき貞享・元禄期(1684-1704)に刊行され,流行し,1739年(元文4)の《けいせいあらし山》まで京坂と江戸で約200種が出版されている。その形式・体裁は,京坂と江戸,また出版年次によって相違があるが,一般には縦本の半紙本形式で,表紙には左方に狂言名を記した外題簽,その右に名題・座元名および主演級の役者4名ほどを記した方簽を張り,見返しには役人替名が連記してある。本文は1冊10丁前後で,ふつうこれに挿絵が見開き2面ないし4面ある。その記述の形式から見て,当時流行の浮世草子や絵入浄瑠璃本などの影響を強く受けて成立していることが窺われる。ほかに大当り狂言に限り,主な役者の芸評を加え,本文の内容を豊富にした,上下2冊の〈上本(じようほん)〉が刊行されたものもある。狂言本は,当時の歌舞伎狂言の内容を知る上で,役者評判記番付と並んで,最も貴重で重要な資料といえる。《元禄歌舞伎傑作集》などに収録。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「狂言本」の意味・わかりやすい解説

狂言本
きょうげんぼん

狂言の台本。普通は伝書,または正本和泉流では『六義 (りくぎ) 』ともいう。狂言は長い間,口伝で伝えられ,現存最古の詞章書留には,天正6 (1578) 年の奥書のある『天正狂言本』があるが,筋書程度で流儀は未詳。大蔵流は寛永 19 (1642) 年筆録の 13世家元の『虎明本』,寛政4 (1792) 年の 19世家元の『虎寛本』以降,和泉流は慶長 (1600頃) の『天理本』以降,鷺流は元禄末 (1700頃) 分家伝右衛門保教の『筆録』以降のものである。江戸時代にはすべて他見を許さぬ秘書として伝えられ,印刷流布されたのは明治以後であり,各流現行のものは一部を除いてなお未刊のものが多い。

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