(読み)ちん

精選版 日本国語大辞典 「狆」の意味・読み・例文・類語

ちん【狆】

〘名〙 犬の一品種。体重二~三キログラムの小形種。額が広く、眼と鼻が横に一直線に並ぶ。体毛は黒と白または茶と白のぶちで、絹糸状の長毛でおおわれる。奈良時代中国から輸入され江戸時代に盛んに飼育。日本の特産種として外国に輸出されるが、現在ではイギリス・アメリカに優良種の産出が多い。体質が弱く繁殖はむずかしい。愛玩用。ちんころ。
※浮世草子・男色大鑑(1687)二「小脇に手飼のちんをいだき」
[語誌](1)中国では「(ワ)」「猧(ワ)子」「猧児」「払菻狗」などと呼ばれ、「日本紀略‐天長元年四月一七日」「類聚国史‐一九四・殊俗・渤海下・天長元年四月丙申」に「子」と見えるように古くに日本へ伝来した。「書言字考節用集」に「矮狗」、「俚言集覧」に「馬鐙狗」などの表記があるが、これらも中国にならったものであろう。
(2)江戸時代には仮名表記のほか「狆」という表記も現われた。この字は中国では明・清時代の西南のある少数民族を指す字であったが、それとは別に日本で作られたものか。
(3)特徴的な顔つきからの「ちんくしゃ」や、人になつく性質からの「狆猫婆(ちんねこばばあ)」などの表現が生まれ、体躯が小さいところから「ちんころ」に広く子犬を指す用法も生じた。

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デジタル大辞泉 「狆」の意味・読み・例文・類語

ちん【×狆】

家畜の犬の一品種。小形の愛玩犬で、体高約25センチ。毛は絹糸状で長く、白地に黒または茶色の斑があり、顔が平たい。奈良時代に中国から移入された原種を改良したもので、品種として特徴をもつようになったのは江戸中期。

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改訂新版 世界大百科事典 「狆」の意味・わかりやすい解説

狆 (チン[種])
Japanese spaniel

日本の愛玩犬で,チンとは小さいイヌ〈チイヌ〉〈チヌ〉がなまったものといわれる。8~9世紀に新羅や渤海から朝廷へ貢上された宮廷犬や遣唐使が持ち帰ったイヌが今日のチンの始祖犬で,ペキニーズもまた同じ祖先から出発している。後者は主としてイギリス人の手になったが,チンは日本人の手によって祖先の原型をよく保って現在に発展してきたイヌである。祖先犬自体が古代中国で宮廷犬としてはぐくまれた純粋の愛玩犬で,チンは日本人が作出した唯一の傑作として広く世界に知られている。おでこで鼻が短くしゃくれ,円い目が左右に離れて鼻端と並び,“狆くしゃ”そのものの愛嬌ある顔貌が特徴である。ふさふさとした白く長い直毛に,主として黒または黄褐の斑があり,顔の奴(やつこ)斑も特徴。体重は約2~3.5kgの超小型種。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「狆」の意味・わかりやすい解説


ちん
Japanese spaniel

イヌの一品種。愛玩犬。土着の日本犬ではなく,ヨーロッパの長毛小型犬がシルクロードを通って中国大陸に渡り,さらに朝鮮を経て奈良時代に日本に渡来したものと推定される。性質は快活でやさしく,知能も高い。体高 20~23cm,体重約 3kg。吻が短く,眼は大きい。耳に飾り毛がある。毛色は黒と白,または赤と白のぶちで,ぶちは顔面や胴に左右平均に分布する。

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犬&猫:ペットの品種がわかる事典 「狆」の解説

チン【狆 Chin】

日本原産の小型犬。顔が広く、口吻は短い。白地に黒または赤の斑をもつ家庭愛玩犬である。JKCでは、第9グループ(愛玩犬)に分類する。◇ジャパニーズ・チンともいう。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「狆」の解説

狆 (チン)

動物。イヌ科のイヌの一品種

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【イヌ(犬)】より

…短毛のブラッドハウンドダルメシアンフォックスハウンドポインター(イラスト)などと,一般に長毛で四肢が比較的短いスパニエル,レトリバー,セッター(イラスト)などが含まれる。ペキニーズチン(イラスト),パピヨン(パピロン),マルチーズなどもこの系統に属する。(2)(c)ハスキー類 イノストランゼビ系でオオカミに似るが眼窩が高い。…

※「狆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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