狸腹鼓(読み)タヌキノハラツヅミ

デジタル大辞泉 「狸腹鼓」の意味・読み・例文・類語

たぬきのはらつづみ【狸腹鼓】[狂言]

狂言大蔵和泉いずみ流。雌狸が尼に化けて猟師殺生を戒めるが、見破られて命ごいに腹鼓を打ち、すきを見て逃げる。

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精選版 日本国語大辞典 「狸腹鼓」の意味・読み・例文・類語

たぬきのはらつづみ【狸腹鼓】

狂言。大蔵・和泉流。雌狸が尼に化けて狩人殺生戒を破ることの恐ろしさを説くが、正体を見破られる。狸は命ごいに腹鼓を打ち、すきを見て逃げ出す。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「狸腹鼓」の意味・わかりやすい解説

狸腹鼓
たぬきのはらつづみ

狂言の曲名雑狂言。猟師が狸を射ようと物陰に隠れて待っている。そこへ夫の雄狸の行方を心配する雌狸(シテ。狸の面を着用)が尼に化けて来かかり、殺生の恐ろしさを語って聞かせる。猟師は改心するが、尼と別れたあとしきりに犬がほえるのを不審に思い、庵(いおり)に潜んでいる尼をみつけて正体を見破る。射殺そうとするが、雌狸が腹の子が不憫(ふびん)だと命ごいをするので、腹鼓をみせるならと命を助ける。尼は早替りで装束を脱ぎ狸の姿となり、腹鼓を打つうち、すきをみて弓矢を奪い、逆に猟師を追い込んでいく。以上は和泉(いずみ)流の現在の内容で、前田藩とゆかりが深く「加賀狸」と俗称される。大蔵流の現行曲は、江戸末期に井伊直弼(なおすけ)が古作を改訂したもので通称「彦根(ひこね)狸」、和泉流と大筋に違いはないが、シテが初め妙寸(みょうすん)(尼)と狸の面を二重に着けているのが特例。両流とも最高秘曲としているが、演出に伝統の厚みが感じられない。

[小林 責]

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