猫に小判(読み)ねこにこばん

精選版 日本国語大辞典 「猫に小判」の意味・読み・例文・類語

ねこ【猫】 に=小判(こばん)[=小判(こばん)を見(み)せる]

高価なものを与えても、何の反応効果もないたとえ。また、どんな貴重なものでも、その価値がわからない者に与えては、何の役にも立たないことのたとえ。豚に真珠。猫に石仏
評判記・野良立役舞台大鏡(1687)水嶋四郎兵衛「ちんふんかんの絶句律詩につづってしさいをこねましたによって猫(ネコ)小判(コバン)を見せたやうでよひやらわるいやら」

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デジタル大辞泉 「猫に小判」の意味・読み・例文・類語

ねこ小判こばん

貴重なものを与えても、本人にはその値うちがわからないことのたとえ。

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ことわざを知る辞典 「猫に小判」の解説

猫に小判

猫に小判をあたえても少しも喜ばず、ありがたみがない。高価なものや貴重なものをあたえても、価値のわからない人には何の意味もないことのたとえ。

[使用例] 「〈略〉ご院さまがおいでの節に、教えていただこうかしら」「ほかに適当な方がありますよ」「お道具は、一ト揃い揃えています。何ですか、亡くなった旦那が自慢にしていた、ずいぶん高価なお茶碗もございますけど、猫に小判ですわ」[丹羽文雄菩提樹|1955]

[使用例] 「じゃその高いワイン、二人で飲もうぜ。洋子の帰国祝いってことでさ」
 「冗談じゃないわ」私は鼻を鳴らした。「猫に小判よ。このワイン、どれほど苦労して持ってきたか知らないでしょ。もっと分かった人に飲んでもらうわよ」「おお、こわ」[林真理子*最終便に間に合えば|1985]

[解説] 実際に猫に小判をあたえることはまずないでしょうが、その思いがけない組み合わせがユーモラスな上に、視覚的にも容易にイメージが浮かび、効果的な比喩となっています。よいものを価値のわからない者にあたえても無意味で、もったいないと他人を批評するほか、自分には価値がわからないことを素直に(あるいは謙遜して)認めて使う場合もあります。
 江戸中期には、「猫に小判を見せたよう」と直喩形式でしたが、「猫に小判」と簡潔な暗喩にすることで、ことわざらしい表現となりました。後期には、上方いろはかるたに採用され、さらにひろく知られるようになったものです。小判が姿を消した現代でも盛んに使われ、子どもにも親しまれる表現といってよいでしょう。なお、近年は聖書に由来する「豚に真珠」もほぼ同じ意味で使われています。

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