猿投山(読み)さなげやま

日本歴史地名大系 「猿投山」の解説

猿投山
さなげやま

標高六二九メートル。猿投山を水源として猿投川が流れ、伊保いぼ川との合流点まで幅五〇〇―一千メートル、南北長さ六キロにわたって谷状地が開析されている。中世、この開析地に神郷じんごう加納かのう舞木まいき亀首かめくびの諸郷が形成されている。北東から南西の方向に猿投・さかい川断層が延び、北西側には瀬戸層の藤岡ふじおか面、南東側には猿投山塊の花崗岩類がみられる。南麓の神郷下じんごうした遺跡からは、四千点を超える縄文期の土器片と石器が発見されている。

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改訂新版 世界大百科事典 「猿投山」の意味・わかりやすい解説

猿投山 (さなげやま)

愛知県豊田市北端瀬戸市との境界にある標高629mの山で,愛知高原国定公園の中心をなす。北東から南西方向に断層線が走り,山腹には天然記念物の球状花コウ岩(菊石)がみられる。また花コウ岩の風化した〈サバ土〉は陶土の原料として利用される。山麓には三河三宮で武神,農業神として尊崇される猿投神社,古墳時代後期以降の須恵器生産が行われた猿投山古窯址群猿投窯)がある。山頂を経由して東海自然歩道が通る。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「猿投山」の意味・わかりやすい解説

猿投山
さなげやま

愛知県北部、瀬戸市と豊田市(とよたし)の境にある山。標高629メートル。地質は花崗(かこう)岩を母岩とし、国指定天然記念物の球状花崗岩(菊石)が貫入され、山頂の天然ツガ林は貴重な植物学上の資源。南西麓(ろく)一帯の風化土(サバ土)は良質な陶土で、古代・中世の猿投山古窯址(し)群では1000基を超える窯跡が発見された。三河(みかわ)三社の一つ式内社猿投神社本社は麓(ふもと)に、山頂には分社東宮、西宮を祀(まつ)り、大碓命(おおうすのみこと)の墓所もある。陶器産地として県内では、最古に開発が勧められた地区といわれる。愛知高原国定公園に含まれる。登山道は瀬戸市側は雲興寺からのルート、豊田市側は猿投神社からのルートなどがある。

[伊藤郷平]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「猿投山」の意味・わかりやすい解説

猿投山
さなげやま

愛知県北西部,美濃三河高原の西端にある山。標高 629m。東側は断層崖急斜面,西側はゆるやかに傾斜する傾動地塊。全山ほぼ花崗岩からなり,風化が進み,花崗岩の中に国の天然記念物「猿投山の球状花崗岩」が貫入している。風化土は「さば」と呼ばれ,長石含有が多く西麓の瀬戸市の陶業の原料となっている。南山麓,豊田市北西部の三河三ノ宮の猿投神社は,多くの文化財を所蔵する。愛知高原国定公園に属する。

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デジタル大辞泉プラス 「猿投山」の解説

猿投山

愛知県豊田市と瀬戸市の境にある山。標高629メートル。「さなげやま」と読む。愛知高原国定公園に属する。古くから霊山として知られ、山麓に猿投神社本社、山頂に分社の東宮、西宮がある。

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世界大百科事典(旧版)内の猿投山の言及

【猿投神社】より

…祭神は現在大碓(おおうす)命を主神として,垂仁・景行天皇を配祀するが,このようになったのは室町末期ないし近世初頭のことと思われ,六国史には〈狭投(さなげ)神〉とある。尾張と三河両国にまたがる猿投山に対する信仰よりはじまった神社と考えられ,その南麓に本社が,山上の東西に東宮・西宮が鎮座する。このため中世以来,三所大権現,三所大明神とも呼ばれた。…

※「猿投山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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