猿沢池(読み)サルサワノイケ

デジタル大辞泉 「猿沢池」の意味・読み・例文・類語

さるさわ‐の‐いけ〔さるさは‐〕【猿沢池】

奈良市三条通り、興福寺南門前にある池。放生池として設けられた。

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精選版 日本国語大辞典 「猿沢池」の意味・読み・例文・類語

さるさわ‐の‐いけ さるさは‥【猿沢池】

奈良市三条通の南側にある池。インドの仏跡獼猴(びこう)池に模して、興福寺南大門前の放生(ほうじょう)池として設置された。この池に身を投げた釆女(うねめ)にまつわる衣掛柳などの古跡がある。〔文明本節用集(室町中)〕

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日本歴史地名大系 「猿沢池」の解説

猿沢池
さるさわいけ

[現在地名]奈良市登大路町

興福寺南大門跡前、三条通のすべり坂の下に位置し、同寺の放生池である。面積は七千二〇〇平方メートル。周囲約三〇〇メートル。「興福寺流記」に「宝字記云、南花薗四坊、在池一堤、天平記云、名佐努作波」とみえ、また同書に「猿沢池竜池事、旧記云、夫興福寺伽藍、執臣丞相結構、伏竜繋繁盛地、寺辺南有竜池、水色滄浪、波浪浩汗、時生蓮花、各開栄芬馥、同宇之昔、神竜池故、天下旱魃水半不減」とあり、すでに奈良時代に興福寺の南花園に佐努佐波池が築造されていたことが知られる。この池はいさ川の渓谷に築かれており、「佐努」は狭野、「佐波」は沢(渓流)の意と考えられる。

興福寺供養の日には船楽を行った(「春記」補遺)。池には竜がすむと信じられ、「細々要記」応安三年(一三七〇)八月条に「一、廿六日午時ハカリニ 猿沢池ノ水ヲ辻風吹アケテ、一二丈アカル云々 不思議歟」とあり、時々虹をみたと記す。

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改訂新版 世界大百科事典 「猿沢池」の意味・わかりやすい解説

猿沢池 (さるさわいけ)

奈良県奈良市東部の奈良公園,興福寺南側の池。周囲400m足らずの小さな池で,興福寺の放生(ほうじよう)池としてつくられた。興福寺五重塔が水面に映り,奈良を代表する名所の一つである。《大和物語》に平城天皇の寵が衰えたことを嘆いた采女(うねめ)が身を投げたことが記されており,謡曲《采女》の題材ともなっている。池の南東には采女が入水するときに着物を掛けたと伝えられる衣掛柳が,北西には采女社があり,毎年仲秋の名月の夜に池に花扇を浮かべて采女祭が行われる。古来〈澄まず濁らず,出ず入らず,魚が七分に水三分〉と表現された浅い池であるが,時として水の色が赤く変化することがある。これはプランクトンによるものだが,池の水が赤くなった年には凶事がおこるという伝承があり,赤変に際して祈禱したり赤飯をたいて供養したりしたことが室町中・末期などの記録に見える。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「猿沢池」の意味・わかりやすい解説

猿沢池
さるさわのいけ

奈良市中央部の奈良公園内の池。三条通り辷坂(すべりざか)南側にあり、周囲約360メートルの小さな池で、興福寺の放生(ほうじょう)池としてインドの獼猴(びこう)池に擬してつくられた。池畔ヤナギ、興福寺の五重塔を映した池面などは風情があり、「猿沢池の月」は奈良八景の一つとされた。北西畔に采女(うねめ)神社、東畔に衣掛(きぬかけ)柳がある。『大和(やまと)物語』に平城(へいぜい)天皇に仕えた采女が寵(ちょう)の衰えたのを嘆き、この池に身を投じたとある。9月中秋に采女祭が催される。

[菊地一郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「猿沢池」の意味・わかりやすい解説

猿沢池
さるさわのいけ

奈良市の市街地中央部,興福寺の南にある人工池。周囲 360m。かつては興福寺の放生池で,現在も放生会にはフナ,コイが放たれる。池畔のヤナギや興福寺の五重塔が美しい影を映し,コイ,カメなどが多く,俗に魚7分に水3分といわれてきた。奈良時代,天皇の寵愛の衰えたのを嘆いて,池に投身した采女 (うねめ) をまつる采女神社や衣掛 (きぬかけ) 柳が池畔にある。

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百科事典マイペディア 「猿沢池」の意味・わかりやすい解説

猿沢池【さるさわのいけ】

奈良県奈良市の奈良公園内にある池。周囲360m。《枕草子》に猿沢の池とあるほか,佐努作波とも記される。かつての興福寺の放生池で,池畔に柳が茂り五重塔の影をうつす。文武天皇に仕えた采女(うねめ)が寵(ちょう)の衰えたのを悲しみ入水したと伝え,北西角に采女神社をまつる。室町期には猿沢池の月が南都八景の一つとして京都の貴族に評判となった。

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