玉手箱(読み)タマテバコ

デジタル大辞泉 「玉手箱」の意味・読み・例文・類語

たま‐てばこ【玉手箱】

美しい手箱。特に、浦島太郎が、竜宮乙姫おとひめからもらって帰ったという箱。
秘密にして、容易には人に見せない大切なもの。
(比喩的に)すばらしいもの、珍しいものが多くあることをいう。「工芸館は技術の美の玉手箱

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精選版 日本国語大辞典 「玉手箱」の意味・読み・例文・類語

たま‐てばこ【玉手箱】

〘名〙
① (「たま」は美称) 美しい手箱。特に、丹後国浦島龍宮乙姫からもらって持ち帰ったという箱。あけてはならないという乙姫の戒めを破って箱をあけたところ、中から白い煙が出て、浦島はたちまち白髪の老人に化したという。
※書陵部本拾遺愚草(1216‐33頃)上「玉てはこあくれば夢のふたみがたふたりや袖の浪にくちなん」
※俳諧・野ざらし紀行(1685‐86頃)「母の白髪おがめよ、浦島の子が玉手箱、汝がまゆもやや老たり」
② (転じて) 秘密にして容易に人に明けて示さないもの。
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生と赤い月「複雑不可解に見えるものだって、〈略〉その玉手箱の内容は案外驚くべく簡単なからくりにすぎず」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「玉手箱」の意味・わかりやすい解説

玉手箱
たまてばこ

昔話異郷から得た不思議な力をもつ道具を主題にした宝物譚(たん)の一つ。竜宮(水中の異郷)を訪問した土産(みやげ)にもらってくる宝物で、宝物の種類により、それぞれ独立した類型の昔話として扱われている。玉手箱は「浦島太郎」の物語で知られている。竜宮の乙姫(おとひめ)から開けてはならないといって渡された玉手箱を開けると、中から白い煙が出て、太郎は急に老人になったという。異郷と現世との時間の単位の違いが玉手箱の中に込められていたような語り方であるが、本来は、霊魂を身体の外に置くことによって不死身を得るという外魂(がいこん)の信仰を基盤にした話で、おそらく玉手箱は外魂の入れ物であろう。奈良時代の『丹後国風土記(たんごのくにふどき)』(逸文)の水江(みずのえ)の浦の嶼子(しまこ)の物語にも、「玉匣(たまくしげ)」(りっぱな櫛(くし)入れ。女性の化粧道具入れ)としてみえる。ほかに、竜宮から聴耳(ききみみ)の玉などをもらってくる「聴耳」、不思議な子供や犬をもらってくる「竜宮童子」などの昔話もある。『古事記』『日本書紀』にみえる「海幸山幸(うみさちやまさち)」の物語では、竜宮で山幸が、潮満つ玉と潮干る玉という潮の干満が自在にできる宝物をもらってきて、兄の海幸を降伏させる話になっている。岩手県奥州(おうしゅう)市などには、竜宮から雨を降らせる玉をもらってきた話がある。これらは水神の世界から水を支配する宝物を得る物語である。竜王の娘と結婚していた漁夫が、開けるなといって竜女から渡された宝箱を開けたために竜宮に帰れなくなったという話は朝鮮にもあり、『今昔(こんじゃく)物語集』に和訳されている『大唐西域記(だいとうさいいきき)』の竜宮伝説にも宝剣入れの箱がみえ、和文では「玉の箱」とある。玉手箱のイメージは中国の説話を経由して形成されたものである。竜宮など超自然的な世界から不思議な宝物をもらう話は東アジアをはじめ諸国にも知られており、昔話を構成する重要な要素になっている。

[小島瓔

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「玉手箱」の解説

玉手箱
たまてばこ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
嶺琴八十助
初演
万延1.9(京・東芝居)

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世界大百科事典(旧版)内の玉手箱の言及

【箱】より

…〈眉造箱,歯黒箱,元結箱,鏡箱,釵子(さいし)箱,櫛掃(くしはらい)箱,櫛箱,白粉箱,爪切箱,熨斗(のし)箱,かもじ箱,硯箱,料紙箱を収め,万葉集抄,後選集抄,古今集とを収納する〉とある。なお,玉手箱は手箱の美称である。代表的な遺品に東京国立博物館の片輪車蒔絵螺鈿手箱(平安時代。…

※「玉手箱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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