王法(読み)おうぼう

精選版 日本国語大辞典 「王法」の意味・読み・例文・類語

おう‐ぼう ワウボフ【王法】

〘名〙 (後世「おうほう」) 王のとるべき正しい道。国王の施す法令政治仏教では出世間の法としての「仏法」に対して、世間支配者の法をいう。
東大寺文書‐四・一三・天喜元年(1053)七月日・美濃国茜部荘司住人等解「若無王法者、豈有仏法乎、仍興法之故、王法最盛也」
※読本・昔話稲妻表紙(1806)三「あきらかなる所には王法(ワウボフ)あり、くらき所には神霊あり」 〔史記‐儒林伝賛〕

おう‐ほう ワウハフ【王法】

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デジタル大辞泉 「王法」の意味・読み・例文・類語

おう‐ぼう〔ワウボフ〕【王法】

仏教で、国王の定めた法令。また、仏法に対して政治をいう。世法国法
「仏法―の相比するゆゑんなり」〈太平記・八〉

おう‐ほう〔ワウハフ〕【王法】

国王の定めた法令。
帝王として守り行うべき道。→おうぼう(王法)

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改訂新版 世界大百科事典 「王法」の意味・わかりやすい解説

王法 (おうぼう)

仏法に対して,世俗の法,慣行をいう。仏典では,帝王の守るべき法(《王法正理論》),帝王の定めた法(《灌頂経》など),広く世間一般の法や掟(《無量寿経》など)の3通りの意に用いられている。日本では中世において,《平家物語》に〈仏法王法牛角也〉とあるように,仏法と並記され,両者があいまって,まったき世界となるという,いわゆる仏法王法両輪論が展開された。《愚管抄》はこの思想を説く代表的な書である。《樵談治要》に〈仏法王法二なく〉とみえるように,室町期まで政治思想として用いられた。仏教のうちでは,在家主義の真宗において仏法王法両輪論がうけつがれた。存覚は《破邪顕正抄》で〈仏法王法は一双なり〉とのべているが,本願寺8世蓮如に至って,いわゆる王法為本説として強調された。御文(おふみ)に〈まづ王法をもて本とし仁義をもて先として,世間通途の義に順じて,当流安心をば内心にふかくたくはへて〉とあるのがそれである。しかし《蓮如上人御一代記聞書》に〈王法は額にあてよ,仏法は内心に深く蓄えよ〉とあるような用例が多く,王法為本というのは必ずしも妥当ではない。むしろ,近世から近代にかけて真宗の真俗二諦(しんぞくにたい)論のうちで,王法為本説として強調されたとみるべきであろう。
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世界大百科事典(旧版)内の王法の言及

【憲法】より

…市民革命期の思想が,形式的意味の憲法を重視したことには,きわめて大きな実質的・歴史的意義があった。フランスについて見ると,14世紀以来,王位継承と課税権に関連する不文の王国基本法(lois du royaume,lois fondamentales,lois constitutionnellesとよばれた)とその他の王法(lois du roi)を区別し,前者は国王によっても改変できないと考えられていたが,それは,(3)のかぎりでの標識はすでに意識されていた,ということを意味する。それに対し,18世紀になって,チュルゴや〈フィロゾーフ〉たち(18世紀フランスの啓蒙思想家たち)がそれぞれの立場から,〈フランス王国には憲法がない〉というときには,(1)ないし(2)の標識を重視した。…

【古代法】より


[族長法から国造法へ]
 こうした族長法の展開に並行して,5世紀ないし6世紀ころより,畿内およびその周辺の諸豪族の政治的結合体であるヤマト朝廷の権力が,族長の上位の政治権力として拡大する。石母田は,このヤマト朝廷権力のもとで発達した法を王法と称しているが,この王法もまた,族長法をとりこみつつ自己の法を発達させたのであった。大祓についていえば,王法の発達により,それは大王が挙行する全国的大祓に転じてしまう。…

※「王法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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